薫くみこ「あした天気に十二歳」

(前の記事からお読みいただけると幸いです)
 児童文学史上に燦然と輝く薫くみこ先生「十二歳シリーズ」の、本作は第2弾。
 かおりは名門私立女子中学に、梢と菜々は公立中学に進学するが、三人の友情は変わらず、近所なのもあって、たびたび会って遊んでいる。
 そんなある日、梢と菜々は、かおりの父が女の人と歩いているのを目撃してしまう。
 同じ頃かおりも、母親の違う兄や姉たちが、父の女性問題について話し合っているのを立ち聞きしてしまう。 唯一母が同じ兄の透も父の問題は知っている様子。 さらには入院中の母の様子もどこかおかしい。 かおりはひとり悩み始める。
 そんなかおりに親身になってくれるのが、担任で美しく聡明な島村夕子先生。
 ところがその島村先生が、学校関係の妻子ある男性と交際しているといううわさを聞き、かおりは絶望して行方をくらましてしまう―――

 中学生になり、こどもの頃は自分のことだけ考えていればよかったのが、だんだん家族や友人、さらには社会へと視野が広がっていき、その過程で悩むことも増えてくる。 かおりは父の不倫疑惑というシリアスな問題に突き当たることになる。
 悩むかおりに島村先生が語る印象的な言葉がある。
「あのね、1たす1が3でもまるになっちゃうの」
 大人になると、子供時代のように何でもきっちりしていればマルがもらえるということもなく、それどころか明らかに外れたことをしていても許されてしまう者もいれば、心ならずも外れて行ってしまう者もいる、そういう大人の世界の不条理を伝えようとしていたのかもしれない。
 島村先生も、うわさが本当ならば、不倫という「バツ」な行為をしているわけだが、それでもひたむきに、自分がしたいと思ってしていることならば、リスクはすべて引き受ける覚悟で、とことんやってみるべきだ。 周りを気にして立ち止まってしまうのはもったいないことだ。 そういうメッセージが込められているのだろう。
 中学生になったばかりのかおりに(そして小学生だった読者の私に)は、理解しがたいメッセージだったかもしれないけれど。
 周りばかり気にして、リスクが少ない方へ少ない方へと生きてきてしまった私は、少しだけ島村先生に憧れなくもない。


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