「香山リカのきょうの不健康」

 鈴木慶一、高橋幸宏、大槻ケンヂ。
 言わずと知れた日本ロック界の大御所のお三方が、実はそれぞれ神経症、恐怖症、パニック症候群などの病と戦っていた(いる)。
 そんな彼らと、精神科医・香山リカとの対談集。
 
 3つの対談を読んでまず思ったのは、恐怖症や不安神経症になる人というのは、「死」よりもむしろ「生きること」を強く望んでいて、「生きたい」「死にたくない」という思いが強いあまりにこういった病になるのかなということ。
 私自身、ごく軽いものではあるが先端恐怖、強迫神経症、単一恐怖(ほかの虫は何てことないのに唯一ゴ**リだけに異様な恐怖心を持つ)といった症状をかかえている。
 その恐怖の根本には「不幸にあいたくない」「身近な人を失いたくない」「死にたくない」という強烈な思いがあることも自覚している。
 ここで告白してしまうけど、電話を切るとき、必ず相手ではなく自分が「バイバイ」と言って切らないと、不幸が起こるのではとか(相手の「バイバイ」という言葉が、私にとって最後に聞く相手の言葉なんじゃないかとか)、自宅のカギを二つ閉めるとき、必ず「こんにちは、キリンジの堀込泰行です」(ひとつ閉める)「堀込高樹です」(もうひとつを閉める)と、頭の中で唱えてカギを閉めないと安心できなかったりとか、馬鹿馬鹿しいけれどそういう思いにとらわれてしまうと日常生活に支障をきたすのだ。

 このあたりはオーケンがいいことを言ってくれている。
 「コンサートツアーに出るとき、『このカバンを持って行くと悪いツアーになる』と思ってしまった。
 でも『カバンぐらいで悪いツアーになるんじゃしょうがないな』と思い直してそのカバンを持っていった。
 そうするととても良いツアーだった。
 以来そういう思いにとらわれると『それくらいで不幸が起こるんじゃしょうがないな』と思うようにしている」
 私も「自分が最後に『バイバイ』と言わなかったくらいで相手が死んじゃうんじゃ、それはしょうがないな」と思えるようになりたい。
 
 幸宏氏いわく「この世の中で、まともでいられる方が難しい」
 香山先生いわく「そうですよ。普通に学校を出て、普通に就職して結婚して、それほど難しいことはないですよ」
 そう。どこかでつまずいたり、人知れず恐怖をかかえたり、そういったものがまったくない人、まったくない人生の方が珍しいのであって、慶一氏のように「自分は梅毒なんじゃないか」という不安に30年もとらわれたり(私もちょっとでもどこかが痛くなると『すわ癌か!?』と思ったりしてしまう方)している人の方がむしろ普通なんじゃないだろうかと、ふと安心したり。

 ただし文庫版あとがきでは、安易に心の病を語りたがる風潮、安易に同情しあったりふたこと目には「私って鬱っぽいの」などと本当の鬱病でもないのに軽々しく口にする風潮に、香山先生が警鐘を鳴らしている。
 この風潮がさらにエスカレートした状態が、香山先生著「仕事中だけ「うつ病」になる人たち」で読むことができる。


香山リカのきょうの不健康 (河出文庫)
河出書房新社
香山 リカ

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