サニーデイ・サービス「青春狂走曲」

 この本の存在すら、申し訳ないことに全然知らなかった。それくらい、音楽から、サニーデイ・サービスから離れた日常を送っていたことになる。  そう、あの知らせを目にするまでは。  アーティスト本というものは数多く存在するけれども、ここまでほとんどインタビューのみで構成された本もそうそうないかもしれない。  サニーデイ・サービスをずっと追い続けてきた北沢夏音氏による、デビューから2000年の解散、2008年の再結成、そして2016年の丸山晴茂氏の離脱までのインタビュー集である。  サニーデイのファン以外の人にもぜひ読んでもらいたいのには理由がある。  これは単なるバンドの栄光と崩壊、再起を記したインタビュー集ではない。  才気に満ち溢れた人間と、彼についていくので精いっぱいだった仲間たちとの、苦しいほどの差異、そこからくる亀裂、再生を通して、「組織のあり方」「リーダーのあり方」「構成員としての在り方」までをも考えさせられる一冊なのである。  途方もない才能と実力、商才にまで恵まれた一人のロックミュージシャン。キラリと光る才能のかけらはあるのに努力でその才能を伸ばすことができず、メンタルも弱い一人のメンバー。その間に挟まれて調整を担うような形になる、才能面でも人間的にもごく普通のメンバー。  危うすぎるバランスは、才能に恵まれたリーダーが苛立ちを他のメンバーにぶつける形で壊れ始め、一人は酒に走る。そしてついにリーダー自らが「俺、辞めるわ」と唐突に宣言。バンドは崩壊する。  才能と実力(努力する才能もあるのだろう)が溢れるばかりのリーダーはソロミュージシャンになり、新しい仲間と堅実にミュージシャンとしての地位を維持していく。一方他のメンバーは、空白の時間を飲み倒す者あり、他のバンドのマネージャーとして腕を振るう者もあり。別々の道を歩いていた3人が、まさかの再結成。  大人になった3人は今度こそ青い情熱ばかりではなく適切な距離を保ちながらバンドを続けていく、はずだった。  サニーデイのもう一人のメンバーと言ってもいいほどの存在だったディレクターの渡邊氏も登場する。 ほとんど実の兄のような愛情を曽我部氏に注ぐも、他のメンバーに対してははっきり言って冷淡と言ってもいい。 「あじさい」のレコーディングのエピソードなどはちょっと本当にひどいと思う(あの名曲がそんな感じで録られてたのか……)。   「とにかく僕は曽我部が大好きだった。それだけでこの仕事は成立していると本気で思ってた」と、他の雑誌で語っているのを読んだことがあるが、いやいや、ディレクターとリーダーとの蜜月だけじゃバンドは成立しないっしょ、と突っ込みたくなった。 やはりそんな感じだったのか。 他のメンバーはどんな気持ちで曽我部氏と渡邊氏を見ていたのだろう……。  そんな彼らをほとんど実の兄というか伯父さんのような深い愛情で見守り、インタビューを続けてきた北沢氏。 (笑)は一切なく(もちろん実際は笑いもあったのだろうが)、きりりとした秋風のような清涼な文章でサニーデイを紡いでいく。 フリッパーズ・ギター、小沢健二、ムーンライダーズ、はっぴぃえんどなどの名前をちりばめながらも、他の何とも違う唯一無二のバンド・サニーデイの姿を浮き上がらせていく。 行間から「雨の土曜日」「花咲くころ」「スロウライダー」「セツナ」などの名曲の数々が聞こえてくるようだ。 苦しくなるくらい。  本書が出版された翌年、丸山氏は短い生涯を終えた。テクニック先行とは言い難い独特のドラムと、細面のはにかんだ可愛らしい笑顔の記憶をファンの心に残して。   丸山氏が長引く体調不良で離脱した2016年のインタビューで、田中貴氏と曽我部恵一氏が彼のドラムについて語っている。  「やっぱり晴茂くんは、曲の空気を読み取るのがうまいんですよ。「この曲で一発金物を“チン”と入れてくれる?」と言っても、他のドラマーだと全然違う“チン”がきたりすることもあるけど、晴茂くんは一言でタイミングも音色もバッチリなやつを入れてくる。晴茂くんはそういう雰囲気をつかむのが絶妙なんです。その人の生き様が音に出ているんだなと、思いますね」  「晴茂くんのドラムって本当に奇跡だから、これは替えが利かないな、という感じ。この人の代わりってないんだなと思いました」  私の手元にある本書の裏表紙には、なぜか鉛筆でさっと付いたような汚れが付いている。  でもそんなことは気にしない。消しゴムで消せばいいだけだ(消してないけど)。  この大切な本を、同じように大切に出版社の人か書店の人がその手で扱っているうちに付いてしまったのだ。  そんな人の手のぬくもりが、サニーデイ・サービスのこのインタビュー集にはふさわしいように思っている。 青春狂走曲
青春狂走曲
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中山可穂「銀橋」

 中山可穂さんの「男役」「娘役」に次ぐ、宝塚シリーズ第3弾が出ていたことを知り、さっそく読みました。  人気男役・レオンこと花瀬レオと、ナッツこと永遠ひかるの間の学年に当たる、実力派男役・ジェリコこと鷹城あきらが今回の主人公。  いぶし銀の輝きを放ち続ける超実力派専科の男役・アモーレこと愛河凛(そういえば大河凛って男役さんがいたな)に憧れ続け、恵まれたルックスと実力にもかかわらずスター路線に乗ることをかたくなに拒み、新人公演でもアモーレさんの役をゲットし、別格男役として宙組で不動の地位を築いていたジェリコ。  ある日、音楽学校時代から親しくしている上級生・レオンが、花組から宙組に異動してきてトップになる。  ジェリコにとっては願ってもないことである。  しかもそのお披露目公演は、アモーレさんの退団公演ともなってしまい、ジェリコは気合を入れて稽古に臨むが、千秋楽を前にまさかの事態が起こる。アモーレさんが公演中に姿を消したのである――。  「男役」からの通しキャラであるレオンと、下級生のナッツの禁断の(?)関係性がその後どうなったのか、ナッツの憧れの人であるパッパさんこと如月すみれの謎、などなど、通して読んできた読者には興味をそそられる内容であり、ジェリコとアモーレさんの師弟関係にも涙が。  実際の専科さんってどうなんだろう。すみれコードぶっちぎりで言えば、下手したら還暦前後のお姉さま方である。アモーレさんのように舞台でのケガがもとで視力が極端に落ちてしまっている人、持病を抱えている人もいるかもしれない。  もっとも、アモーレさんのように自らの退団公演の途中に劇場を出ていき、武庫川の河原で心臓発作を起こして倒れるなんてことが現実に起こったら大変だが、タカラジェンヌとして年齢を重ねていく過程には、人には言えないしんどい状況も往々にしてあるのかもしれない。  タカラジェンヌは全員が未婚の女性だが、若い時期は誰にとっても永遠ではない。退団したら一人の女性としてどう生きるのか、残るなら残るでどう、タカラジェンヌとして生きていくのか、そんな姿を、パッパさんとアモーレさんは読者に示してくれているのかもしれない。    個人的には、ジェリコのお父さんのキャラがなんとも言えず味があると思った。  堅物な、誰も笑顔を見たことのないほどの大学教授が、まさかの一人娘のタカラヅカ志望という事態に大いにうろたえ、とことんタカラヅカについて調べつくし、ジェリコの入団後はすべての公演に足を運び、DVDもすべて買うのである。  親子なのに敬語で話す父が、タカラヅカという共通項でなんとか娘との距離を縮めようとする、そんな不器用な、ぎこちない親子愛がなんだかしみるんだな。  リアルジェンヌさんのお父さんにも、そういう人が結構いるのかも……?
銀橋
KADOKAWA
2018-09-21
中山 可穂

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中山可穂「娘役」

 中山可穂さんの「男役」に次ぐ、宝塚シリーズ(?)第2弾は、タカラヅカの娘役と、彼女に純粋な愛をささげるヤクザの組長という、ありえないようであるかもしれないファンタジーである。   大鰐組組長・ムッシュこと大鰐健太郎を殺るべく、尾行を続けてきた他組の若衆・片桐蛍一。  ある日、ムッシュが入っていった先、それはなんと宝塚大劇場……。  大いに戸惑いながらも当日券をゲットし、背後からムッシュの首に手をかけたその瞬間、舞台上でラインダンスを踊っていた初舞台生・のび太こと野火ほたるが勢いよく飛ばしたハイヒールが片桐の目の前に飛んできたのだ。  なぜか片桐はそのハイヒールを持ち帰り、夜の大阪の街をシューズリペアキットを探して奔走し、一晩かけて修理し、宝塚歌劇団雪組に送り返す。  ほたるが飛ばしたハイヒールは、天からの啓示だったのか。片桐は組を移籍し、大鰐組預かりになる。ムッシュの話し相手となった片桐に、もう自分は長くないと悟っていたムッシュは、自分が知る限りの宝塚歌劇の知識を教えるのだった。  チンピラ上がりから組内二番手、そして組長へと、組内でめきめき地位を上げる日々の中で、片桐はほたるに思いを寄せ続け、ほたる会に入り、花代をたっぷり弾み、しかしお茶会には決して顔を出さず、あくまでヤクザとしての分をわきまえてひそかにほたるを応援するのだった。  一方のほたるは、子役専科と揶揄されるほど子役が続き、初めての新人公演ヒロインで主演の薔薇木涼とのデュエットダンスで尻もちをついてしまうという大失態を犯し、初めてのバウホールヒロインで練習しすぎて疲労骨折してしまうなど、苦難の娘役生活を送っていた。  そんなある日、雪組行きつけの寿司店で、片桐とほたるは生涯にたった一度、言葉を交わすこととなる――。  クールで熱い、クレバーにして大胆な片桐がとにかくかっこいい(その苦み走ったいい男ぶりから、雪組の組子たちからは「健さん」と呼ばれる)。現実にこんなヤクザさんいるんかしら、というくらい。 そんな片桐が、ほたるのこととなれば途端に純情になるのがまたかわいい。  片桐が拾われる「大鰐組」の描写がまたヅカファンには受ける。なにしろ組長以下組員全員に愛称がつけられ(ちなみに片桐は「ギリ」)、若頭は「二番手」と呼ばれ、組のモットーは「品格・行儀・謙虚」(これ、実在したタカラヅカの大御所・春日野八千代御大が、タカラジェンヌの心得として口を酸っぱくして言っていた言葉)。 組長がヅカファンだからってこんなに徹底するとは、と、笑いながらも、こんな組があったらいいなあとも思う。  一方で、チャンスを次々にふいにしながらも別格娘役として活躍していたほたるが、なんと研10(入団10年目という意味です)でまさかのトップ就任(これは娘役としてはかなり遅い部類)! 片桐にとってはずっと願い続けていたこと、だったのだが……。    ハードボイルドで哀しい、清く正しく美しくはかない10年愛の物語を、ぜひ読んでみて下さい📖
娘役
KADOKAWA/角川書店
2016-04-27
中山 可穂

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PTAに疲れたら「七色結び」!

 PTAの本部役員選挙、日本中の母親の皆様(父親もちょっとは?)お疲れ様です。  いやですよね。 あの威圧的な、「選挙には必ず出席して下さい」「仕事は辞退理由にはなりません」「委任状を出しても選出される場合があります」「選出された場合は電話に必ず出て下さい」っていう、あの感じ。  かくいう私も、「そうはいっても私は仕事してるし、専業主婦の人がやってくれるんじゃないの?」という甘い考えが災いし、見事に本部役員に選ばれてしまい、一年間必死で務め、来年度は2年目、つまり副会長という大役につくことになってしまいました しかもなんと、学童保育の保護者会(なんてものがあるんです!)会長までも引き受けざるを得なくなり……  そんな私、そして日本中のトホホな役員の皆さんを癒してくれそうな、PTAを舞台にした痛快小説を見つけました。  中学校の前PTA会長の不倫騒動での辞任に伴い、会長を引き受ける羽目になった、ちょっとお調子者の広報部員・鶴子がヒロイン。  旧態依然とした組織を少しずつ変えていこうと奮闘するのですが、介護を理由に役員から逃げる(お姑さんは実はピンピンしている)人あり、関西弁ペラペラのくせに、「ワタシニホンゴワカラナーイ」と突然外人を装って役員から逃げる人あり、怖いお父ちゃんあり……。  くたくたになった鶴子は、ある日、同居の義母・ナナが夢中になっているネットアイドル・フジマサキを発見し、自らもずぶずぶはまっていくのだが……。というのがストーリー。 作者の神田茜さんは講談師の方なのだが、ご自身のPTA役員経験を生かした作品とあって、リアルでしかもテンポが速くどんどん読み進めていける。  フジマサキの正体がまさかの……!というオチも含めて(なんとなく途中からわかるんですけどね)、大団円、ハッピーエンドなのも良い。  PTA仕事の息抜きに軽い気持ちで読んでみてはいかがでしょうか。  さしずめ、鶴子にとってのフジマサキが私にとっては宝塚歌劇でしょうか。 仕事にPTAに家事に、それらとは全然関係ないことを考えてしばし逃避しないとやってられないですもんね
七色結び
光文社
神田茜

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posted by つむ at 13:51

暮しの手帖別冊 わたしの暮らしのヒント集

 「暮しの手帖」はもともと好きな雑誌で、時々買っているんだけれど、なかでも別冊「暮らしのヒント集」は、そのエッセンスが凝縮されていてとても読んでいてほっとできたり、ためになったり、目の保養になったり。  一家に一冊あってもいい良書だと思う。 「たとえばこんな、わたしの一日。」というコーナーがいつも気に入ってるんだけれど、私の場合はどんな感じかというと、例えばこんな感じです たとえばこんな、わたしの一日。火曜日 5時40分 起床 起きたらまず、白湯を飲みます。着替え、身支度、洗濯、朝食の準備とあわただしくこなしている間に、夫と子どもが起きてきます。朝食を済ませ、後片づけ、ゴミ出し、歯みがきなどしている間に夫が出勤。 7時52分 子どもを送る 帰宅後、洗濯物干し、夕食の下ごしらえなど引き続き家事の続きをこなします。ビールの在庫チェック、氷のチェック、チラシでゴミ入れづくり、掃除などもこの時間に行います。 8時40分 出発 駅まで20分くらいかけて歩きます。本当はもう少し遅い出発でもいいのですが、早く職場についておきたいので早めに出かけています。JRとバスを乗り継いで職場につきます。バスの中では、手帳を出して「自分会議」を開きます。今日の予定、今後の予定、やるべきことなどを確認する、大切な会議です。 10時 勤務開始 大学でパート勤務しています。力仕事やパソコン作業が主です。 12時30分 昼食 学生食堂で昼食をとります。だいたいひとりです。安くて栄養バランスの取れた昼食をとれるので助かっています。 13時30分 業務再開 あっという間に時間が過ぎます。 15時30分 帰路に就く バスに乗っている30分は、ポータブルプレイヤーで音楽を聴いています。リラックスできる時間と言いたいところですが、仕事のことをつい考えてしまいます。地元についたら、食料や日用品などを軽く買い物します。 17時 帰宅 子どももほぼ同時間に帰ってきます。帰宅するとすぐに、洗濯物を取り込み、子どもの本読みの宿題を聞き、連絡帳、プリント類、ほかの宿題ができているかなどのチェックをし、夕食の支度をはじめます。下ごしらえをしてあるので楽といえば楽ですが……。夕食後、片づけをし、コーヒーを入れてやっとひといき、と言いたいところですが、洗濯物を畳んだり、翌日の準備をしたり、まだ気は抜けません。 20時 入浴 子どもと一緒に入浴します。だいたい湯上りのころに夫が帰宅します。夫と今日の出来事などを話しながら、やはり家事の残務をこなします。 21時すぎ 就寝 子どもと一緒に寝てしまいます。 てな感じですかね。
わたしの暮らしのヒント集
暮しの手帖社
暮しの手帖編集部

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posted by つむ at 14:17

よしもとばなな「小さな幸せ46こ」

 自分でも意外な気がしているんですが、このブログによしもと(吉本)ばななはもしかして初登場?  高校・大学時代はあほほど読んでたのに。  大人になって急速に読まなくなってしまったけれど、それでもエッセイはたまに見つけると読んだりしていました。  そんなばななさんの最新エッセイなのかな?  仕事、グルメ、旅行、ファッションなどなど、いつもの前向きなばなな節かと思いきや、子育て、ご両親の看取りがあったこともあり、いつになく内省的な面も垣間見えるエッセイ集になっていました。  お母さまとの確執ってほどでもないにせよ、いろいろ行き違いがあったことも。 お父さま(いわずと知れた吉本隆明氏)がものすごく早食いだったことも。  それまで強気なイメージが先行(あくまでも私の中で)していたばななさんも、ここへきて少し丸く(?)なったのだろうかという気がしました。  それにしても息子さんと一緒に寝ていた日々を追憶する「ふくらはぎ」には泣きそうになってしまいました。  何をかくそう、私もいまだに8歳の息子と一緒に寝ています。 別々になるなんて今の時点では考えられないくらい、毎晩ギュッとしながら寝てます。  ばななさんは毎晩、息子さんのふくらはぎをもみもみしながら寝ていたそうで、そのふくらはぎが今では手元にないことを惜しみつつ、一緒に寝ていたかつての幸せをかみしめつつ、やはり子離れ・親離れは必要なのだと受け入れています。  私もいつまでも息子と一緒に寝られるなんて思っていません。 来年の今頃にはもう離れているかもしれません。  だからこそ、今の幸せ、「ママだっこして」と言ってもらえる幸せ、眠っていても無意識に私を求めてごそごそと寄ってきてくれる存在がある幸せを思いきり堪能しようと思ってます。  タイトル通り、小さなありふれた、それでも確実な幸せを、どこからでも読んで拾い集めることが出来るエッセイ集です。 誰しも一つは思い当たる幸せがあるのではないでしょうか。  
小さな幸せ46こ
中央公論新社
よしもとばなな

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posted by つむ at 12:14

暮しの手帖別冊 暮らしのヒント集4

 「あさが来た」の感動もさめやらぬままに、「とと姉ちゃん」も見てしまっている私です。  もともと「暮しの手帖」という雑誌は好きで時々買っていて、「続・暮らしのヒント集」は持っていたものの、「ヒント集3」がどうしても入手できなくてどうしたもんかと思っていたところに「4」の発売情報を得て、速攻予約したのでした。  「暮しの手帖」でおなじみの、それぞれにていねいな暮らしを実践している各界の著名人の方々の暮らしを垣間見、ヒントを得ることができるシリーズです。  あとがき的な「編集者の手帖」では、「まれに読者の方から、『わたしにはこんなにていねいな暮らしはできない』というお声を伺うこともあります。でも、もう少しゆったりとしたスタンスでお読みいただきたいのです。『このなかのひとつのヒントからでも、取り入れてみてはいかがでしょうか』というのが、わたしたちの考えです」という文がある。気ぜわしくあわただしい毎日、こんなゆったりとした時間・丁寧に手をかけた暮らしなんてできるか! という気持ちになる時もあるけれど、自分に出来ることだけでいいから実践してみると、自分に対して胸を張ることができる。ということなのかな。  「同じ質問、それぞれの答え。○○さんの場合」というのがあって、登場するすべての著名人に対して同じ質問をし、それぞれの回答にヒントを得るというものなんだけれど、皆さんのように立派な回答はできないながら、私なりに回答してみるとこうなります↓ 1.ずっと手元にある本、何度も見たい映画を教えてください。 A.うーん……(゜-゜) 宝塚関係の書籍と、こういう暮らし関係の書籍が多いかな。映画は……映画研究会だったくせにあまり見ていなくて……。 2.身だしなみで、これだけはきちんとしていたい、ということは? A.洋服は安価なものでいいから、靴だけはきちんとしたものを履きたいと思っています(思っているだけで経済面でなかなかできないんだけど)。あと、靴下・タイツ関係にはこだわっています。こぎれいで、機能的で快適に履けるもの。 3.いま勉強していること、身に付けたいことは何ですか? A.働き始めたばかりなので、今はとにかく仕事を覚えたい。その上で、作業が目的になってしまうのではなく、何のためにその作業をするのか、その先を見据えた仕事の仕方ができるようにしたいです。 4.健康のために心がけていること、習慣にしていることは? A.意外と立ち仕事が多いので、鉄分をサプリと食事の両方から積極的に摂るように心がけています。また、毎朝のテレビ体操、入浴前の目の体操など、なかなか毎日はできませんが、できるだけ習慣にしようとしています。 5.家族と接するときに大切にしていることを教えてください。 A.いつも上機嫌で接したいのですが、そうもいかない時も多々あり、反省の日々です。 6.一日のなかで、いちばん大切な時間はどんな時ですか? A.夕食の後片付けを終えて、コーヒーを入れてぼーっとする時。しかし最近はこの時間さえも、子供のプリントを見たり、洗濯物を畳んだりすることで終わってしまったりします。仕事をしている以上仕方ないと半ばあきらめています。 7.これまで他人から言われて元気が出た言葉や、心に残る励ましを教えてください。 A.こんな私がここで働いていていいんだろうかと、内心自信がないまま働いているのですが、上司が他の人に私のことを、最初からきびきびと電話もとるしよく働いてくれているし、十分一人でも任せられると言ってくれたのを聞いて、やる気が出てきました。 8.あなたの人生で目指す自分像を教えてください。 A.そんなたいそうなことは考えたこともありませんが……。家庭以外に自分の居場所があり、その居場所で自分なりに力を尽くして頑張り、人に喜んでもらい、仲間に囲まれて笑っていたい。それ以上望むことはない気がします。
暮らしのヒント集4 (暮しの手帖 別冊)
暮しの手帖社
2016-03-05

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posted by つむ at 15:59

中本千晶「ヅカファン道」

 「ヅカファン」とはいかなる生き物なのか?  私も十分ヅカファンだと自分では思い込んでいた。  しかし本書を読んで、出待ち・入り待ちもしない、年2回観劇できたらいい方、タカラヅカ・スカイステージにも加入してない、好きなジェンヌさんはいるけれど会に入るほどでもない、そんな私がヅカファンを名乗るなんぞおこがましいんじゃーーーー!! との感を強くした。  本書は、年間21回以上は観劇するというディープなヅカファンへのアンケートをもとに、「タカラヅカのどういうところにハマるのか?」「男性ファンとはどういう人々?」「年間いくらのお金、どれくらいの時間をタカラヅカに費やしているのか?」「ヅカファンに必要な能力とは?」などなどの疑問に答えてくれるとともに、「ネットの出現によって変質するヅカファン」、「ヅカファンあるある」、「ヅカファンそれぞれのファンスタンス」、「ヅカ川柳」など、さまざまな視点からヅカファンなる生き物を解き明かす意欲作である。  では私も、本書いわく「特定のご贔屓はいないけれど、タカラヅカそのものが何となく好き」というライト層のファンとして、アンケートのうち何問かに答えてみたいと思いまーす  Q.あなたが「惚れてしまうタイプ」に関して自己分析があればお願いします。  A.やっぱり、タカラジェンヌとしてだけでなく女性として普通に綺麗な人が好きですね。いわゆる「化粧映えするタイプ」ではなく、素顔も美しい人。天寿光希ちゃんとか。実力が備わっていればなお結構。  Q.「ああ、私どんだけ宝塚好きやねん」と、自分の好き度に呆れる(といいつつ自慢に思う)エピソードがあれば教えて下さい。  A.「星乃珈琲店」とか、ジェンヌさんの名前が入ったお店や商品などについ反応してしまう。あと、ひそかに息子を演出家にしようともくろんでいて(?)、タカラヅカの歌を歌ったりDVDを見せたりして洗脳している最中。  Q.タカラヅカファンとしての矜持やポリシー、「これだけは踏み越えない」と決めている一線などがあれば教えて下さい。  A.家族に過剰な負担をかけてまで観劇しない。帰りが遅くならないように、3時開演の時はダッシュで帰宅する。  Q.タカラヅカファンになったことで得られたもの、学んだことはなんですか?  A.おしゃれして出かける場所がある幸せ。地方都市で主婦してると、ついつい毎日チュニックにデニムとかになってしまいますが、フルメイクして、スカートにタイツにパンプス、アクセサリーにきちんとしたバッグを身につけて阪急電車に乗り、背筋を伸ばして花のみちを歩き、美しい劇場で美しいショーを見ることができることは、心の美容液になっています。  Q.かつてタカラヅカと同じくらいハマったもの、または今、タカラヅカと同じぐらいハマっているものは何かありますか? また、それに関してタカラヅカに通じる部分があれば教えて下さい。  A.ヅカファンであると同時に、私は昔も今もロックファンです。宝塚に向かう阪急電車の中でさえ、DAPの中身はカーネーション。タカラヅカとは対極にあるいぶし銀のロックを聴きながら向かうのです。通じる部分といえば、どちらにも「遠征」してしまうほどのディープなファンの方々がいらっしゃるところでしょうか。遠征できるほどの財力と体力と時間のある方々がうらやましくもあります。  それにしても、ライト層のファンとして言わせてもらうと、本書に出てくるディープなファンの方々って、毎日のように劇場に通いつめて、観劇が日常化してしまって、飽きないのかなあと心配になる。  私みたいに年2回しか観劇できないからこそ、めったにないハレの日として、準備もし、おしゃれもし、背筋も伸ばし、新鮮な気持ちで劇場に向かえるのであって、ディープ層の方々が慣れずにだれずに飽きずに通うことが出来るその心情ってどんなものなのだろうか?  やはり本書にあるように、ご贔屓と一分一秒でも長く近くにいたい、毎日でも会いたい、寝ても覚めてもご贔屓……てな恋心が根底にあるからなのだろうか。  本書いわく、「ヅカファンをやることによって『子孫繁栄につながる女子力』は得られないかもしれない」けれど、キラキラ生き生きと現実に立ち向かうことが出来る女子力は磨かれると思う。あと、ディープ層の皆様って長生きできそうである。ご贔屓に恋することによって免疫力が格段に身につきそうだから
ヅカファン道
東京堂出版
中本 千晶

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posted by つむ at 10:25

中山可穂「男役」

 ぼーっとしていてもこんな小説を見つけてしまうなんて、私のヅカアンテナもここに極まれり、といったところかしら  ストーリーを簡単に(ネタばれ注意!)  ※はじめにお断りしておきますが、この小説は宝塚歌劇団という実在の劇団を舞台にしていますが、まったくのフィクションで、実際の人物・事件等とは何の関係もありません。  宝塚歌劇団研究科3年(研3)にして新人公演主演に抜擢された男役、ナッツこと永遠ひかる。  しかも本役(つまりトップスター)は憧れのパッパさんこと如月すみれ。 さらにそのパッパさんのサヨナラ公演ということもあり、ひかるは光栄ながらも緊張と苦悩の日々を送っていた。  演目「セビリアの赤い月」は、50年ほど前に「黒薔薇のプリンス」とまで称された人気男役トップスター・ファンファンこと扇乙矢、および娘役トップ・チャメこと神無月れいのお披露目公演であった。 しかし不幸なことに開演わずか2日目にして、ファンファンが舞台上の事故で死亡。 チャメはショックのあまり休演し、そのままひっそりと退団してしまった。 さらには演出家の卯山拳までもが早世してしまう。 以来、再演のたびにケガや事故が起こる「呪われた演目」として恐れられる一方、ファンファンは生徒たちのピンチを救ったりアドバイスを与えたりする「宝塚の守り神」として「ファントムさん」と称され崇められることとなる。 ファントムさんに目をかけてもらった生徒は必ずスターになると。   パッパさんには新人の頃からファントムさんの姿が見え、会話もできるのだが、ある時ひかるにもファントムさんの声が聞こえるようになる。 しかしそれには理由があった。 ひかるの大好きな父方の祖母、なぜかひかるの宝塚受験をかたくなに反対し、入団してからもただの一度も見に来てくれたことのない祖母こそ、チャメその人なのである。 チャメのことを50年もの間ずっと劇団で待ち続けていたというファントムさんになんとか祖母を会わせたいと、ひかるは家族を巻き込んで祖母の説得に当たる。 チャメは認知症を患っていたのだが、奇跡的に自力で宝塚大劇場にたどりつき、孫娘が熱演する新人公演の客席で、かつての相手役・ファントムさんとの再会を果たすが……。  作者の中山可穂さんは少女時代からのヅカファンで、宝塚歌劇団の演出家を志望していた時期もあるそうで、スターをめざして邁進する若手ジェンヌたちのひたむきさ、下級生に主役を奪われても腐らず下級生を励ます上級生たちなどの描写は的確である。  しかし、視点がひかる、すみれ、ひかるの叔父など動いてしまって定まらない(ひかるが主人公だと思ってたら、なぜかすみれの視点で終了とか)、「役不足」という言葉を間違って使っているなど、ちょっと小説として残念な点もあった。  また、すみれがトップになるのと引き換えにファントムさんに譲り渡したものは何なのか、とか、ひかると上級生・花瀬レオとの仲間愛を超えたちょっと危ない関係(? なのかな?)の顛末とか、あえて書かれていないものも多くあり、これはもしや続編を出す気満々なのでは、と期待も残る。(すみれはもしかしたら、トップになるために恋人と子供を捨てたのだろうか……?)  全体にヅカファンなら楽しく読める小説となっているが、宝塚独自の用語がほとんど解説もなしにそのまま載っているので、ファン以外には「?」の部分もあるかもしれない。 お近くのヅカファンをつかまえて一緒に読むようにして下さいw  私の勝手な妄想だと、ひかるは宙組の和希そらみたいな、現代的でやや線の細い感じの子を想像する。 すみれはかつての真矢みきみたいな感じかな。 ほかに花瀬レオは、二番手男役の笹にしきは、新人公演ヒロインの夢ぴりかは(それにしてもこのあたりの芸名はもっと何とかならなかったのか。米じゃないんだから)……などと妄想キャストを考えてみるのも楽しい。
男役
KADOKAWA/角川書店
中山 可穂

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posted by つむ at 11:35

「ヅカメン!お父ちゃんたちの宝塚」

 実は、中学からの友人のお兄さんが、宝塚歌劇団にお勤めなのだが、「えーーーーっ!!!」と驚嘆と羨望の声をあげた私と対照的に、タカラヅカにまったく興味がない当の友人はクールなもので、一度宝塚を見には行ったものの、「良かったけど、高いおカネを出してまで何度も行きたいというほどでは……」と、くーっ、あんたヅカファンだったら喉から手が出るほど行きたい公演をみておいてその感想かい、と、私に地団太を踏ませたものである。  そんな友人に読ませてあげたい(もうお兄さん経由で読んでるかもしれないけど)本書。  著者の宮津大蔵さんという方は児童向けミステリーなどを書いてきた人で、一般書はこれが初めてとのことだが、おもしろい。 ぐいぐい読ませる。  宝塚歌劇団月組を主な舞台としているが、あくまでフィクション、登場人物はまったくの架空の人物である。  月組の生徒監(組の団員達の世話をしたり、全国ツアー公演などの引率をしたりする、人格に優れた年配男性が勤める役職。通称:お父ちゃん)の多々良。  吃音に悩む娘・万里子の宝塚音楽学校合格を応援する、酒屋を営む荒木。  万里子のライバル・美雪の兄で、自らも俳優を志す石川。  やがて男役スターになった万里子と美雪、ではなく、「マリコさんとミユキさん」を慕い、装置作りに情熱を燃やす、大道具の原口。  そして、ベテランダンサー・サンバの肩叩きをどう切り出そうか悩む、プロデューサーの鍋島。  華やかなタカラジェンヌ達を応援し、支える男たちの群像劇となっている。  全員、宝塚には興味がない、むしろ偏見を持っているところから始まっている。  それが、自分がひょんなことから宝塚に関わることになり、のめりこんでいき、魅力のとりことなり、タカラジェンヌ達を心から賛美するようになるのである。  特に、お父ちゃんこと多々良と、新米プロデューサー・鍋島のくだりがおもしろい。 もともと阪急電鉄の上司と部下だった二人が、立場が逆転してもやはりかつての上下関係が抜けきれず、鍋島は仕事で迷うたびに多々良に教えを請い、多々良はお父ちゃんの如く優しく教え諭すのである。 赤提灯で飲んでは英気を養う二人の関係性がほのぼのする。 そう、タカラヅカの社員さんとて普通のおっちゃん(失礼)である。  タカラヅカに出会う前の彼らのようにタカラヅカにわけもなく偏見を持っている人、「女ばかりでちゃらちゃら学芸会みたいなのやってるんじゃないの」などと思っている方にも読んでほしい。 タカラヅカは女性たちの、そして男性たちの本気の仕事場なのである。
ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚
廣済堂出版
宮津 大蔵

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posted by つむ at 10:56

水村美苗「母の遺産」

 我が家は今、事情があって新聞を取っていないんだけれど、読売新聞を取っていた頃、毎週土曜日に連載されていたこの小説を、読むともなく読んでいて、単行本になればまたじっくりと読んでみたいと思っていた。  主人公は、50代の奈津紀・美津紀の姉妹(主に美津紀)。  体調不良や夫の浮気(それも今回は本気らしい)や多忙な仕事をかかえる二人はただでさえ大変。  そこへ、最大のお荷物である母・紀子(超がつくわがまま放題の母親である)の入院である。  幼い頃から振り回され、奈津紀は過剰に甘やかされ美津紀は放っておかれ、庶子であった母の名状しがたい見果てぬ分不相応な夢に付き合わされ、略奪してまで結婚したはずの父を放って別の男と浮気している母に代わって父の看病と看取りを済ませ……きわめつけが、骨折して入院し急速に呆けていった母(それでもわがままは忘れない)が誤嚥性肺炎で死ぬのを見届けること。  「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」  浮気して父の見舞いにろくに来なかった母に、「死んでほしい」と初めて願った日から何年も経ち、今では母の見舞いに疲れ果てた姉妹は、この言葉を何度も心の中でつぶやきながら、それでも母を見捨てることはしない。   心は最後まで許さないながら、娘として最低限の義務を果たし、母を見送った美津紀は、浮気中である夫との関係を見つめ直すべく、ひとり箱根へと旅立つ。     私も事情があってこの一年、週末に介護老人保健施設へ通う日々なので、新聞連載時よりもはるかに実感を持って、老いた方々を見ることができている。  大半がおとなしい方々で、施設内も常におだやかな空気が流れているけれども、こんな紀子のような老婆が一人でもいたらたまったものではないだろうなと思うほど、認知症になってなおわがまま放題、若い頃の夢を追い続ける母・紀子の描写は壮絶である。  祖父が芸者であった祖母に産ませた私生児、という不幸な生い立ちに同情できないほど、使える手段はすべて使い、周囲に媚びへつらいまくって、どうにか「お嬢さま」と呼ばれるような地位を勝ち得た母。   そんな強烈な人格の母に振り回され、自分の人生としっかり向き合えないままばたばたと生きてきてしまった美津紀は、母の死後、夫と別れてひとりで生きていくことを決意する。   そこへ東日本大震災――。   不幸だ不幸だ、不幸の糸がねばねばと取りついて離れないと、己の人生を嘆いていた美津紀は、自分は幸せだ、とここで初めて実感する。   そして長年許すことができなかった母のことも、すでに許している自分に気づくのである。    タイトルにある「母の遺産」とは、ただ単に母の思いがけないほど多額の遺産を意味するのではなく、死ぬこと、生きること、許すこと、強くなること、魂の憧れ立つままに何かを求め続けることを体現した母の姿、でもあるのかもしれない。   まあ、何かを求め続けるあまり周囲を疲弊させるのはいけませんけど。     新聞連載時は、挿絵がなんとも言いようがないほど不気味で、物語の世界に非常に合っていた。  ひとつでいいから挿絵も掲載してほしかったな。
母の遺産―新聞小説
中央公論新社
水村 美苗

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posted by つむ at 11:29

「いちばんよくわかる 手ぬいの基礎」

 今のところ、ミシンを持っていない私なので、手縫いを基礎から学ぼうと思い、この本を買ってみたのですが……  むずかしいっ!  チュニックワンピ、子供のブラウスやズボンといった洋服から、バッグ、ポーチなどの小物まで、いろいろ作り方が載ってはいるんだけれど。  やはりあまりにも、裁断して縫って終わり、では味気ないということなのか、デザインがかなり凝っているものが多くて、いろんな縫い方の練習にはなるかもしれないけれど、とにかく着なくなった服を気軽にポケットティッシュ入れかなんかにリメイクしたい!って感じの私には、ちょっと手が出ないなあ…。  手縫いをしていていつも悩むのが、端の始末をどうしようかということ。  この本には「袋縫い」という方法が紹介されているんですが、うーむ、きれいに端の始末をするためには、こんなにも手間が必要だったのか、と、目からうろこ&やってみてぐったり  かと思うと、大部分は並縫いでOKだったりもして、よくわからない。 私はいつも並縫いでは不安なので、半返し縫いをしているんですけど。  てな感じで、載ってる作品のうち一つでも作れたらいい方かな(っておい)。    そうなんです。 PTA仕事と同窓会活動と育児と日々の主婦業と……でなにかとストレスをためがちな私が、とりあえず晩御飯の洗い物を終えて、コーヒーでも淹れてひといきつく時間、何をするかというと、刺し子でコースターを作ってみたり、着なくなったTシャツで小物を作ってみたり、履かなくなったスカートでバッグを作ってみたり、といった、手縫いなんですよね。  去年までの私からは想像もつかないけれど。 まさか手芸が息抜きになるなんてね。  ただし、最近になってこれすらもストレスの種になってきています。 というのも、6歳になった息子が「ぼくもぬいたい!」と、邪魔をしてくるようになったのです。 ただ黙って縫ってるだけだったらいいけど、「糸変えたい」「ここからどうやったらいいの?」「玉結びやってー」といちいちわずらわしい。 まあ、未来の手芸男子を育ててるんだと思って我慢していますが
いちばんよくわかる 手ぬいの基礎
日本ヴォーグ社
高橋恵美子

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posted by つむ at 10:36

「タカラヅカファンあるある」

 ヅカファン歴10年、観劇回数20回、と言うと、ごく一般的な人から見ると「うおー、ディープなタカラヅカファンなんやねえ」ということになるのかもしれない。  しかししかし、本書に書かれているリアルディープヅカファンの生態は、そんなもんぢゃない!!  入り待ち、出待ちは当たり前。 会(各タカラジェンヌさんの私設ファンクラブ)に入ってガード(ジェンヌさんが安全に出入りができるように、危ないファンからガードすること)もしちゃう。すべての公演を見るのは当然、っていうか毎日観る! 2回公演の日は二回とも当然観る! お茶会(ジェンヌさんのファンの集い)には3ヶ月くらい前から洋服などの準備に余念がなく、結婚式かって感じのドレスアップして馳せ参じる 博多だろうと名古屋だろうと遠征して、飛行機で帰宅して翌日きちんと出勤! 「薔薇」「稽古」「贔屓」なんつー難しい漢字がすらすら書けるのも、毎日のようにせっせと贔屓にお手紙を作っているから(書くのではなく、作る)   などという壮絶なディープヅカファンの「あるある」がいっぱい詰め込まれている本である。  私はそこまでのファンではないかも……。 冒頭に書いたような観劇回数だし、出待ちの姿を遠くから眺めたことが一回あるだけだし(これを「ギャラリー」というそうです)、お茶会にも行ったことない、お手紙も作って渡したことない、会にも入ってない、ていうかそもそも観劇も一年に2回行けたらいい方!  正直、この本に出てくるディープなファンの皆様がうらやましい  著者の空野りかさんという方ご自身がかなりディープなファンの様子。ファンのこともタカラヅカのことも尊重した誠実な筆致に心打たれます(ヅカ本の中には悪意とか自虐がにじんだ物も一部見られるので)。 イラストの白ふくろう舎さんの少女マンガチックな図柄も楽しい。  ディープヅカファン当事者の方だけでなく、このたび初観劇(タカラヅカをよく知らない)というような方にもおすすめできそう。 ごく基本的な用語もしっかりフォローしてくれてますので。
タカラヅカファンあるある
アスペクト
空野りか

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posted by つむ at 14:10

角田光代「対岸の彼女」

 専業主婦の田村小夜子。  学生時代からなかなか友人ができず、3歳の娘のあかりもよその子たちになじめない。  閉塞した状況を打破するためには、自分が働きに出なければ――と就職活動の末、とある掃除代行会社に採用される。  女性社長の楢橋葵は偶然にも大学の同窓生で、同い年の独身。  立場も、持っているものも持っていないものも違う二人の女性の間には、それでも反対側から同じ丘を上っているかのような、友情にも似た結束が生まれつつあった。  しかし葵には秘密の過去があった。  いじめられて引っ越した先の高校のクラスメート・野口魚子(ナナコ)と逃亡し、マンションから飛び降り――女子高生心中未遂事件として騒がれたこの事件に、当時の小夜子も我がことのように興味を持っていた。  人間関係をうまく築けないまま大人になった二人の女性。 果たして私たちは何のために大人になるのか。 大人になれば、本当に大切な人を間違うことなく選べて、行きたい所に足をまっすぐ踏み出せるのか。 それとも大人になるのは、仕事だ家庭だと言い訳をして人間関係の煩わしさから逃げ出してドアをばたんと閉じるためなのか?  すれ違った二人の女性の心が再び通じ合うことは二度とないのだろうか。 葵とナナコが二度と会っていないように……?  小夜子が働きに出ることに理解がない上微妙にマザコンな夫・修二や、子どもを保育園に預けるのはかわいそうだの二人目はまだかだの嫌味を言う修二の母や、幼稚園近くのレストランに毎日集まっては保育園ママを非難する幼稚園ママたちといった人々の描写はややステレオタイプである。  それ以上にステレオタイプなのは、出版当時の宣伝文句にあったという「専業主婦と独身女の友情は成立するのか?」的なあおり方。  私も実はそういう内容の小説を期待して読み始めたのだが、非常に気持ち良く裏切られた。  勝ち組と負け組の葛藤とかそういうのではない。 もっと深く根元的な、なぜ人間同士はこうも、胸苦しくなるほど分かり合えないのか、ということ。  立場が少しでも違えば、目に見えるものが少しでも違ってくれば、少しずつ確実にすれ違っていってしまう心。  とりあえず仕事に逃げることのできる大多数の男性には理解しづらいであろう、女性同士の微妙な心の行き違い。 わだかまり。 一ミリでもずれると相手を許せなくなってしまう、女性独特(なのかな?)の心理。 一度は葵の会社を辞めた小夜子は、再び葵の事務所兼自宅を訪れる。  「なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げ込んでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ」  小夜子と葵はこれからも、立場や考え方の違いからぶつかり合い、再び決別してしまうことになるのかもしれない。 けれども、出会わなかったよりは出会って人間同士の関わりあいを持てた方がよい。 ドアを閉めて自分(と家族)だけの世界に閉じこもったり、ここではないどこかをやみくもに目指して自分や周りを傷つけるよりは、出会って、出会った人々と汗を流してぶつかり合って生きていくことを小夜子も葵も選択したのである。  周囲と上手くいかない人、上手くいかない自分から目をそらしたい人、には読んでみてほしい。  
対岸の彼女 (文春文庫)
文藝春秋
角田 光代

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posted by つむ at 11:14

中本千晶「タカラヅカ流世界史」

 本書は、ややこしい世界史を宝塚歌劇の演目を使ってたどり、楽しく世界史を勉強しよう!というものである。  たとえば、ハプスブルク家の歴史は……となると、当然「エリザベート」が代表的な作品だけれど、本書はそのはるか前、つまり演目でいうと「ドン・カルロス」までさかのぼり、「エル・アルコン」「バッカスと呼ばれた男」「仮面の男」「ハプスブルクの宝剣」「エリザベート」「霧のミラノ」「ソルフェリーノの夜明け」「落陽のパレルモ」「samourai」「ルードヴィヒ2世」「うたかたの恋」と、宝塚の演目とともに歴史をたどっていくわけである。  語り手はそれぞれ、フランスの歴史であればアンドレ・グランディエ、スペイン史であれば「誰がために鐘は鳴る」のアグスティン、といったゆかりの登場人物たち(もちろん架空の人物もいますので注意)。  ヅカファンにとってはおなじみの牧彩子さんの笑えて細かくてよく似ていてかわいいイラストも楽しめる。  著者の中本千晶さんは東京大学卒のフリージャーナリストにして、世界史を最も得意とし、重度のヅカファンでもある。   そんな中本さんはこれまでにもヅカ愛を熱く語る書籍を出版してきたが、これはそんな著者の真骨頂といえるものなのではないか。  私も高校時代にヅカファンだったなら……そしてこういう書籍に出会っていたなら……もっともっと世界史の成績も良くなり、常に赤点スレスレなんてこともなく、センター試験だって70点なんてこともなかっただろうに、と悔やまれるが、これからのヅカファン女子高生(男子高生でももちろん)にはこれでバッチリ楽しく勉強して高得点を取ってもらいたい。  なんてったってルキーニがハプスブルク家の歴史を語ってくれるんだから
タカラヅカ流世界史
東京堂出版
中本 千晶

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posted by つむ at 11:39

川上弘美「ざらざら」

 かかりつけの眼科は、待合室の雑誌が充実していて、私なんかは雑誌を読むのが楽しみで眼科に行っているようなものなんだけれど、「家庭画報」「ターザン」「ノジュール」「ナショナルジオグラフィック」などの雑誌の中に、「クウネル」もある。  「クウネル」はご存知の通り、ナチュラル好き・本物好き・手作り好きな20~30代の女子をターゲットに作られている雑誌だけれど、そういう基本姿勢を裏づけるように、川上弘美の短編が連載されている。  無印良品にパイレックス、デュラレックスのグラス、ていねいに入れたお茶で――みたいな暮らしをしている(まああくまでイメージだが)女子たち(ときには男子)の淡い恋愛模様を描いた短編を、本書は一冊にまとめたものである。  私は川上弘美をきちんとまとめて読むのは初めてだ。 よく考えてみると、読書好きと言っていながらそんなに数は読んでいないことに気づいて(気に入った本を何十年もくりかえし読むタイプなので、好きな作家数も10本の指で足りるくらいなのだ)、そろそろ全然知らない作家の小説でも読んでみましょうかね、と、とりあえず眼科の待合室で読んだことのある川上弘美を選んでみたのだ。  もう少し落ち着いた感じの女性が登場するのかなあと思いきや、わりと幼げな(年齢がではなく、言動などが)女子の話が多いのは少し意外。 「あたし」という一人称で語る主人公が約半数を占めるのは正直少ししんどい。 まあそれはさておき、両想いはほとんどなく、片思い、不倫、すごく年の離れた恋愛、恋愛まで行っていない微妙な想い、などなど、ハッピーエンドとは言い難い話が多数を占める。それでいて、なんとなく読後温かい気持ちになれる、そんな短編集である。  私自身は振られたことも振ったことも不倫だの略奪だのの経験もほとんどない、恋愛においては超低体温女子だ。 好きな人ができても、うまくいかなくて自分が傷つくことが怖くて、いつもアクションを起こさないまま見送ってしまう。 年を取ってみて、「もしかしたらあの時行動を起こしていれば、少しは楽しい思いができたのかもしれない」と後悔しないでもないけれど、あとの祭りだ。 そんな私は、本書の振ったり振られたり泣いたりそれでもしがみついたりふっきったり新しい出会いを見つけたり、そういう女子たちがうらやましい。 「恋ってこういうものだったのかねえ」と、今さら遅いけれど、勉強になるというと変な言い方だけれど、そんな感じだ。  世の男性諸氏、奥さんや恋人が本書を熟読していたら、少し危険な兆候かもしれませんよ。
ざらざら
マガジンハウス
川上 弘美

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posted by つむ at 22:11

「ツレはパパ1年生」おもしろいです!

 久しぶりに市内の子ども図書館に行き、育児書を何冊か借りてきた。  その中でもかなり印象に残ったのがこのマンガ。  マンガなので15分くらいで読めるので、育児で忙しい方にも読みやすいと思う。  「ツレがうつになりまして」で知られる細川貂々さんと、夫である「ツレ」さんとの間に、男の子が誕生。 うつ病で仕事をやめ、主夫になっているツレさんが主に育児を担当することになるのだが、ただでさえ慣れない子育て。 高齢初産、しかも二人ともかなり真面目だったりマイナス思考だったりで、どう転んでもお気楽肝っ玉子育てにはなるはずもない。 そんな二人が力を合わせ、なんとかかんとか子育てをやっていく、その様子が、時にクスクス、時にしみじみと、まさに育児中の私の心にいろんな感情を呼び起こす。 「そうそう、新生児の頃はこんな感じだったわ」というようなことまで思い出す。  特に印象的なのが、男性であるツレさんが子育てに奮闘する姿だ。  産後、体調が戻った妻がここぞとばかりに仕事を増やしすぎ、全然育児に協力してくれないことにキレたり、ついには赤ちゃんを叩いたりしてしまう。 もちろん泣いて赤ちゃんに謝るわけだけれど、「わかるわかる」と頷くママも多いのでは。育児のしんどさに追いつめられながらも、やはり赤ちゃんがかわいくて仕方ない、そんなツレさんの姿がリアルなのである。  「育児なんて、うちのバカなおふくろにだって出来たし、うちのバカな嫁だってやってるんだし、だれにだって出来る簡単な仕事なのさ。 まして俺様みたいな優秀な男に育児なんて、簡単すぎて役不足だね」などと思いあがっている男性諸氏(いまどきそんな時代錯誤な男性がどれくらいいるのかわからないが)にこそ、ぜひ本書を読んで考えを改めてほしいと思う。 ツレさんのような屈強で知性もある男性でさえも、追いつめられて我を忘れてしまうものなのだ、育児という仕事は。  イクメンなんていう男性も増えてきた昨今だが、それでもなお、いまでも、やはり育児は女性の仕事、母親でなければできないこと、母親の存在が何よりも大事、母性に勝るものはない、と、育児を母親にのみ押し付ける風潮はある。 そういう風潮に縛りつけられて、自分らしい生き方が出来ずにもがいている母親が今でもたくさんいる(私も)。 そういう、母性神話を妄信している人、母性神話にとらわれて苦しんでいる人、「ママが働いて、パパに育てられてるなんて、赤ちゃんがかわいそう」などと思ってしまう人、さまざまな人に読んでほしい。  続編もあるようなので私も貂々さんとツレさん、そして赤ちゃんのその後を追っていきたいと思う。 赤ちゃんはうちの子より3ヶ月ほどお兄ちゃんなのだ。 もうオムツも取れただろうな(うちの子は最近取れたばっかり)。
ツレはパパ1年生
朝日新聞出版
細川 貂々

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posted by つむ at 12:07

松浦弥太郎「今日もていねいに。」

 「今日もていねいに。」とは、「暮しの手帖」編集長である松浦弥太郎氏が、編集後記の最後に必ず記す言葉だ。  そんな松浦氏の日々の暮らしの中の、工夫や発見をつづったものがこのエッセイ集ということなのだが―。  暮らしといっても「重曹がどうの」「整理収納がこうの」「料理が―」というようなことは出てこず、どちらかというとビジネスの上での人との付き合い方、心の持ち方の方に大きく紙面が割かれているように思う。  いわば、30~40代の男性ビジネスマン向けの「暮らしの本」という感じなので、「暮しの手帖」の主たる読者層(おそらくは50代以上のやや富裕な専業主婦層)にとっては役立つ内容は少ないかもしれない。 肩すかしをくらった気になる人も多いだろう。  たとえば「したいこととやるべきことの違い」「自分を道具とみなして、自分の使い道を追求しましょう」「自分のデザイン、キャパシティを知っておきましょう」「孤独になることも大切です」―要約するとこんな感じの提言(?)が続くのだ。 これってほとんどビジネスマンの自己啓発書みたいじゃないですか?   著者本人も、おそらく「暮しの手帖」の読者層のみを読者と想定して書いているわけではないだろう。 古書店の店主であり、伝統ある雑誌の編集長でもある、つまりバリバリの「働く40代の男性」という立場での、等身大の「暮らし」「生き方」をつづっているのである。  というわけで、暮らしだの生活だの「ていねいに生きる」だのほっこりだの天然だのといったワードにまったく縁も関心もない、世の働く男性たちにこそ、本書をおすすめしたい。 「そうそう、俺もそうありたいんだよね」と膝を打つ場面もあるかもしれない。  もちろん女性も、人とのほどよい距離の置き方についてなんかは、本書に学ぶことも可能かと思う。 一般論として女性は男性に比べ、家族・仕事仲間・友人などとの距離が必要以上に密になってしまいがちだ。 その結果、相手を問いただしたり、自分が絶対に正しいと主張したりして関係をこじらせてしまうことが多いように思う。 そんな私たち女性は「少しの嘘なら問いたださずに受け流しましょう」「「戦わない。言い負かそうとしない」ことを肝に銘じるだけでも、少し周囲との関係が変わってくるかもしれない。
今日もていねいに。
PHP研究所
松浦 弥太郎

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posted by つむ at 10:14

「続・暮らしのヒント集」

 料理家、園芸家、デザイナー、バレリーナ、エッセイスト……各ジャンルの著名人が、暮らしのこだわりについて語る「ヒント集」である。  ものの少ないシンプルな暮らし、自然や季節とのかかわりを大事にする暮らし、古くても良いものの価値を大事にする暮らし、情報に振り回されない暮らし……。  どれも、私たちがあこがれて、それでもなかなか実行できない暮らし方である。  なかでも興味深いのは、同じ質問にそれぞれの方が答えるという企画。 それぞれにこだわりはあるものの、やはり共通していると思われるものは、「丁寧に暮らす」ということ。 「暮しの手帖」が唱え続ける「今日もていねいに」を、それぞれの方がそれぞれのやり方で実践しているんだなと。  私もその質問に答えてみます。  Q.夜寝る前に読む、好きな本を教えて下さい。  A.「歌劇」「ミュージックマガジン」などの雑誌を常に枕元においています。 暗闇の中で読むので、よく夫に不気味がられます。 目にも悪いと思うのでやめたいと思っているのですが……。  Q.身体のためにいつもしていることを教えて下さい。  A.朝はラジオ体操、夕方に筋トレ、夜はストレッチ……と目標を掲げているものの、なかなか毎日とはいきません。  Q.他人にしてもらって、一番うれしいことは何ですか?  A.やはりほめてもらうこと。 「ここはやっぱりあなたでなければ」「やっぱりあなたしかいないと思っていた」などというほめられ方が大好きです。 なかなかここ数年そういう幸せを味わっていませんが。  Q.生きる上での理念、ポリシーを教えて下さい。  A.そんな立派なものがあったらもっと上手い生き方ができていたはずですが……。 ポリシーもなく、流されるまま生きてきた気がします。 常識もないかも(-_-;)  Q.元気のない時、どうやって気持ちを切り替えますか?  A.寝るに限ります。 あとは、そういう時のための特別な食べ物を普段からイメージしておいて(特別といっても、カフェラッテとかそういう廉価なものですが……)、ここぞという時に食べて自分をなぐさめます。 あと私の場合、音楽を何日も聴いていないと元気がなくなるようなので、DAPでお気に入りの音楽を聴きます。  Q.食事をする上で大切にしていることは何ですか?  A.それも特になくて、ずるずるだらだら食べているだけですが……最近、血糖値が急上昇しない食べ方の順番というのに凝っていて、それは守るようにしています。  Q.一番好きな家事と一番苦手な家事を教えて下さい。  A.好きな家事なんてなくて、家事はすべて苦手ですが、あえていえば、ものを捨てること(笑) 苦手なものは、以前は圧倒的に料理でしたが、料理は最近少しましになってきました。 というわけで、窓ふきや換気扇掃除などの体力がいるものが苦手です。  Q.お金との付き合い方で心がけていることは何ですか?  A.予算を各費目ごとにしっかり立てて、自分が何に毎月どれくらい使っているか把握すること。 すぐ新しいものを買おうとせずに、あるもので代用できないか考えること。  本書に載っている立派な方々に比べ、なんか情けなくなってきましたが、私の場合はこんな感じです。 みなさんも考えてみてはいかがでしょうか。
暮しの手帖別冊 続・暮らしのヒント集 2012年 01月号 [雑誌]
暮しの手帖社
2011-12-05

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posted by つむ at 11:55

ビギナーズ・クラシックス 平家物語

 うちの夫は自他共に認める幕末オタクで、特に坂本龍馬を敬愛し、昨年の大河ドラマ「龍馬伝」の時は毎週毎週、私を相手に幕末のウンチクをとうとうとたれていたものだ。  まあウンチクをたれている時の夫は幸せそうだし、何にしても好きなものがあるというのは良いことだけれど、一方的にたれられっぱなしというのもストレスがたまるもの。  ここはひとつ、私も得意分野(?)の平安時代で対抗しようと、来年の大河「平清盛」を視野に入れて勉強中なのだ。  そこでこの「ビギナーズ・クラシックス 平家物語」。  正直「祇園精舎の…」くらいしか記憶がないし、平家がどのような末路をたどったのかというようなことには学生時代にはほとんど興味がなかったのだけれど、改めてこうしてダイジェストで読んでみると、きらびやかな都人だった頃の平家と、西国に都落ちして追われる身となってからの平家の落差にしみじみと無常を感じる。  結局、平和平和といっても、一部の権力者のためのものでしかなく(ある意味では現代だってそうだ)、その平和もいつかはもろく崩れ去ってしまうものなのか。  大河のスタートまであと半年。  予習のつもりで読んでみられてはいかがでしょうか。  かなりくだけた現代語訳なので読みやすいです。  ***ここからはかなりミーハーな記事になりますのでご了承を***  大河のキャストも発表になりましたね。  平清盛に松山ケンイチ、ライバルである源義朝に玉木宏、さらに天皇家におけるライバル後白河法皇に松田翔太……って、イケメン3人の争いを毎週見られるとは眼福 さらに清盛の正妻・時子に深田恭子、その妹の滋子に成海璃子、他にも檀れい、松雪泰子、りょう……とまあ、女優陣もいい感じである。  あと発表されてない主要人物としては、清盛の子どもたち、とりわけ建礼門院徳子、その夫となる高倉天皇、あとやはり源頼朝、義経、あたりを誰が演じるのか気になるところだ。  それにしても清盛のような人物(絶大な権力を手に入れたものの、悪行もいろいろ犯したために人々の恨みを買い、子孫も不幸な最後を遂げた)を主人公に据えてドラマを制作するとは、かなり難しいのではないか。  ともすれば陰惨で救いのないドラマに仕上がってしまいかねない。  今のご時世、少しでも希望が持てるような大河にしていただきたいものだ。
posted by つむ at 14:42

「子育てハッピーアドバイス 大好き!が伝わるほめ方・叱り方」

 この本の裏表紙には「私だってほめて育てたいけど、うちの子全然ほめられるようなことしないんですよ」と嘆くママのイラストがある。  この言葉、子育て中のママ、パパのほとんどが共感できるのではないか。  私だってそうだ。 かわいくて、かしこくて、丈夫で、本当にそれ以上望むところはないはずの我が子なのに、「あなたのお子さんの良いところは?」と聞かれるとはたと止まってしまう。 逆に、ダメなところはと聞かれるといっぱい出てきてしまうのだ。 いまだにおむつが取れない、走り回ってお話を聞けない、豆腐とキノコを食べない、夜にすんなり寝てくれない、いたずらばっかりする、料理のじゃまをする、朝に「シャキーン!」と「大科学実験」を見ないと気が済まない……枚挙にいとまがない。  本書は子育てに何よりも大切なことは「ほめる」こと、それもただ学力や運動能力などをほめるのではなく、がんばっているその事実を子どもといっしょに喜び、そのうれしい気持ちを子供に伝えることだと説いている。  また、できないことやマイナスの感情(ぐずる、すねる、泣くなど)もありのまま受け入れること。 そうすることによって子どもは生きていく上で最も大切な「自己肯定感」を養うことができるのだという。  自己肯定感とは、自分はここにいていいんだ、自分は自分でいいんだ、どんなダメな自分でも受け入れてもらえるんだという気持ち。  これがしっかりある子どもは、失敗したりいじめられたりしても自暴自棄にならず、「こんなことくらいで自分の価値は減らないぞ」と何度でも立ち上がることができるのである。  私自身、ほめられるより怒られたり否定されたりすることの方が多い子ども時代を送ったので(私だけではなく、日本人は大半がそうではないだろうか?)少しの失敗で深く深く凹んでしまい、新たな挑戦になかなか踏み出せない。  ついついリスクが少なそうな方をとってしまう。  自己肯定感をしっかり育んでもらうような育ち方をしていれば、もっと違う人生になったかもしれない。  まずは自分の子どもにしっかり自己肯定感を持たせてやりたい。  本書はその一助となると思う。  ちなみに私のように「自己肯定感が大事といわれても、親である私自身が自己肯定感が低いんです。いったいどうしたらいいんでしょうか?」という疑問を持つ人も多いと思う。  その答えは続編である「大好き!が伝わるほめ方・叱り方2」に書かれているのでそちらも一読されたい(私はちょっと納得いかない回答だったけど)。
子育てハッピーアドバイス 大好き!が伝わる ほめ方・叱り方
1万年堂出版
明橋大二

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posted by つむ at 10:27

「朽ちていった命―被曝治療83日間の記録」

 こういう重い内容の本を読むことが普段ほとんどないのだけれど、ひょんなきっかけから読むことになり、以来ずっと頭から離れないのである。    1999年9月30日、茨城県東海村の核燃料加工施設・JCOで起きた臨界事故についてのドキュメンタリーである。  2名の作業員のうち、20svの放射線を浴びた大内さんは83日目に、6~10svの放射線を浴びた篠原さんは211日目に、多臓器不全で亡くなることになる。  本書では主に大内さんに焦点を当て、ご本人、ご家族、医療チームの生きるための必死の闘いを追っている。    sv(シーベルト)という単位を、東日本大震災以来私たちはよく耳にしているけれども、致死量は8svとされている中、20svの被曝をした大内さんは、当初から回復は絶望視されていたという。  それでも東大病院に転院してきた時点では、話もでき、右手が腫れているだけで、「もしかしたら退院できるのでは…」という期待をしていた看護師もいたようだ。  しかし大内さんの身体は、被曝したその瞬間に、染色体が破壊されていた。  染色体の破壊は、この先新しい細胞が生成されないことを意味する。  体の内側からじわじわと破壊されていく様子、それを必死で食い止めようとする医療チーム。  「回復の見込みがない患者に、これ以上ケアを施すことに意味はあるのか?」  「本当は患者さん本人も辛いのではないだろうか?」  そう自問しながらも、最後の最後まで希望を捨てない家族のことを思い、一日でも長く生きられるよう、さまざまな医療器具を用い、日本では許可されていない薬まで用い、医療チームは処置をし続けた。  亡くなった大内さんの身体は、唯一心臓だけがきれいなままだったという。  「生きたい」という意思の表れだったのか。  本書に対しての感想としては適切でないかもしれないが、生きるのがつらくなった人、生きる意味を見失った人に、本書をすすめたいと思う。  致死率100%とされる中で、それでも生きたいと闘った人がいる。 最後まであきらめなかった家族がいる。 わずかな良い変化(皮膚の状態が少し良くなったなど)を支えに、丁寧に慎重に、ケアをし続けた主治医や看護師たちがいる。  「命の重さ」を信じられなくなった人に、ぜひ読んでほしいと思う。    もちろん、今のこの時期だからこそ、そして被爆国であり地震国であり原発を多く持つ日本に住んでいる私たちだからこそ、放射能というのがどういうものなのか、大量に被曝するとどうなるのか、知っておく必要があるという意味においても、本書を読む価値はあると思う。  「少量なら害はない」「正しく怖がろう」など、マスコミではいろんな言葉が飛び交っている。 この事故のように、一度に致死量の倍もの被曝をしてしまう例はもちろん稀だとは思う。 しかし、やはり知っておく必要はある。 知った上で、ではこの先原子力とどう向き合っていくのか、考えることが必要なのではないか。  なお、本書はNHKで放送された内容を書籍化したものなので、放送自体はyoutubeにアップされているものを閲覧することが可能です。 理解を深めたい方はご覧になってはいかがでしょうか。
posted by つむ at 11:42

金子由紀子「持たない暮らし」

 今回の東北関東大震災には、阪神大震災を経験した私としても、本当に言葉がない。  何か書かなければと何度PCに向かっても、ブログにしてもtwitterにしても、何を書いても空しいような気がして、キーを打つ手が止まってしまうのである。  募金、ボランティア、節電、それ以外に、被災していない私たちにできることは何だろう。  その一つとして、今後いつどこで起こるかは分からないが来たるべき次の災害に備えること、とりわけ、不要な物を持ちすぎていないかチェックしてみること、というのがあるかもしれない。  このたびの大津波は、大切な物も、そうでもない物も、明日にでも捨てようと思っていた物も、何もかも呑みこんでさらって行ってしまった。  「モノ」のむなしさ、はかなさを痛感した人も多いと思う。  大切なものはともかくとして、使わないのになんとなく取ってある物、もったいないからとしまいこんでいる物、ストックしているうちに古くなってしまった物、誰の家にもあるそういった物を、この機会に見直してみてもいいのではないか。  シンプルライフのカリスマ的存在になった著者は、「持たない暮らし」7ヶ条として、  ・もらわない  ・買わない  ・ストックしない  ・捨てる  ・代用する  ・借りる  ・なしで済ます を挙げている。  特に「代用する」「なしで済ます」は、停電、買い占めなどが問題になっている今、試してみる価値はある。 家電や調理器具などは、代用できるアイディアがいろいろある(詳しくは本書をお読みください)。  金子氏はtwitterでもあらゆるアイテムの代用アイディアをここぞとばかりにいっっっぱいつぶやいておられて、「さすがだなあ」と唸ってしまったのだが、そう考えてみると、「なくても別に困らないけれど、あるからとりあえず使ってる」「なくてもいいけど便利そうだから買った」的なアイテムって、知らず知らずのうちに私たちの身の回りに増殖してたんだなあと思う。  洋服なんかもそうだ。 あるのに、もっと別のものがほしくてつい買ってしまう。 インナーなんかも、安いとついストックしてしまう。 他にも、「ご自由にお持ちください」とあれば、必要ない物でもついごっそりと持ち帰ってしまう。 ジョッキやらトートバッグやらの「おまけ」がほしくてビールを買ってしまう。 携帯電話のショップに行くとつい、無料のポケットティッシュが置いてないかなあと探してしまう――思い当たる人もいるのではないか。  不要なモノ、使いもしないモノに囲まれて暮らしていると、本当に自分にとって必要なモノが見えにくくなる。 モノだけではない。 本当に自分のしたいこと、なりたい自分、克服すべき課題といったものさえもあいまいになってきてしまうのだ。 そうして、自分を好きになれなくなり、なんとなくもやもやした気分のまま日々を過ごすことになる。 こんなにもったいないことはない。  今の自分にとって不要なモノをいったんすべて処分し、以後は、本当に好きな少数の物だけを大切にして暮らすようにすると、整理収納やらそういう無駄な時間を過ごすことが減り、本当に自分のしたいことにだけ時間を割けるようになる。 自分の中にしっかりした軸ができて、ブレない自分になることができる。 そうして夢に近づくことができ、精神的にも落ち着く――そういう暮らしを著者は本書の中で推進しているのだ。  軸なんて全然ない、ブレまくりの私も、少しずつだが自分の持ち物を整理し始めている。 そうすることによって、少しでも「自分とはなにものか」「どういう方向に進んでいけばいいか」が見えてくればいいと願っている。
お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし
アスペクト
金子 由紀子

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posted by つむ at 10:40

キリンジ「自棄っぱちオプティミスト」

 「ダヴィンチ」誌に連載していたキリンジのコラムに加え、ロングインタビューや対談、用語集などてんこ盛りの単行本「自棄っぱちオプティミスト」が発売になった。  私はダヴィンチ誌連載中はこのコラムを読んでいなかったので、今回本になってほっとした口である。  前回の単行本「あの世で罰を受けるほど」に比べ、格段に「エッセイ」としての風格が増したことに驚く。 音楽活動で忙しいはずなのにこのクオリティの高さは、素直に感服した。  ミズモトアキラ氏によるロングインタビューは、デビューから現在までのキリンジを振り返って二人が語った、今まで語ることのなかった本音も交じった、興味深いもの。  「やっぱりあの頃はそうだったんだ…」と納得いく個所もあった。  『都市鉱山』を息子さん(小学1年生)に聴かせたところ「パパ、もっとまじめに歌いなよ!」と言われてしまったという高樹氏には笑ってしまった。  そして圧巻は、キリンジにまつわる用語をまとめた辞典、その名も「奇林辞」。  好きな本、好きだった場所、子供時代の嫌だった思い出、などなど、キリンジを形作っているあらゆる物や人を網羅した(うーん、それは言いすぎかな。特に「人」に関してはもっと掲載するべき重要人物がいっぱいいるような気がする。青山陽一氏とか)辞典なのである。  子供会が嫌で、友達がいなくて孤立していたのに、高樹氏もかばってくれなくて、「ふつうお兄ちゃんは弟の面倒見るもんだろ!」と子供心に思ったという泰行氏にまた笑ってしまった。  字がびっしりなので、活字好きな私なんかにとってはありがたいが、キリンジのヴィジュアルをもっと見たいというファンには若干物足りないかも。  でも読み応え十分です。 最新作「buoyancy」で気になったという方も、昔からのファンも、読んでみるべき!
自棄っぱちオプティミスト
パルコ
キリンジ

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期待を裏切らない!キ ...
松本大洋さんの挿絵前 ...
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posted by つむ at 23:08

薫くみこ「さよなら十二歳のとき」

 「十二歳シリーズ」の最終話となる五作目。  二学期が始まるが、梢と菜々は大きな悩みをかかえている。 自分たちに関する悪いうわさが広まっているのである。 小学六年生の時にクラスメートの飯島よし子とともに起こした「カンニング事件」が蒸し返されて、梢と菜々(特に実際不良仲間に入っていたこともある梢は分が悪い)を避ける者が増えていたのである。  二人は学校が違うかおりに相談しようとするが、かおりはといえば所属するテニス部で、大会のレギュラーメンバーに一年生ながら選出され、練習に打ち込んでいて、二人の悩みを聞く余裕がない。 梢と菜々は再び、かおりに距離を感じることになる。  ところがかおりの身に大事件が起きる。  インドで教師として働いていた初恋の小野さんが、水死したという知らせが届くのだ。  ショックで食事ものどを通らなくなるかおりを梢と菜々が見舞うが、ちょっとした感情の行き違いから喧嘩別れしてしまうことに。  そんなかおりをやさしく励ますのは、意外にも日頃がみがみと口うるさい長姉の洋子だった。  一方、飯島よし子が梢を訪れ、カンニング事件のことを中学に広めたのは自分であること、中学に入学しても相変わらず自分には友人ができないこと、もう一度友達になってほしいことを梢に訴える。 しかし梢は親身に話を聞きつつも、「プライドっつうの? そういうの持てって言いたいよ」と突き放すのである。  やがて校舎から一人の女子生徒が転落―――  本作を初めて読んだときは「なんでまた飯島よし子を持ち出すの? しかも小野さんが死んじゃうなんて…」と、子供ながらにかなり納得いかなかった。  小野さんが死んでしまうことはかおりにとってはあまりにも過酷な試練である。 名門中学に入学したのも、その中学でも五本の指に入る成績を取っているのも、テニス部でレギュラーになっているのも、すべて小野さんに認めてほしいから…そんなかおりは、いつしか自分と小野さんのことしか見えなくなっていた(往々にしてかおりには一途すぎるところがある)。  小野さんを失い、大事な親友である梢と菜々と決裂し、傷心のかおりは、母を亡くした洋子の話を聞き、気持ちを落ち着かせるのである。 美人だがどこか冷たく、気が合わなかった洋子と、初めて心が通った瞬間だった。  また、薫先生としては、どうしても飯島よし子を幸せにしなければ終われないという気持ちがあったのかもしれない。  小学六年生でカンニングという過ちを犯したが、更正して新しい友人たちと楽しく中学生活をすごしている梢と菜々に対し、中学でもいじめられ、家もどうやら貧しい様子、もちろん勉強もスポーツもできない、そんなよし子をかおりたち三人が受け入れ、心からその苦しみをわかるようになって初めてこの物語が終わる。 そう考えておられたのかもしれないと思う。  校舎の屋上から身を投げ、病院に運ばれたよし子をかおりたち三人が見舞う。 「死のうとか思ったわけじゃなくて、ただみんなのとこ行きたいなって…」というよし子に三人は涙する。 よし子に共感できなかった三人(特にかおりにとってはまったく接点がない存在だ)が、やっとそれぞれに痛みを経験し、よし子の痛みを知ることができたのだ。  よし子が転校して幸せになれるかどうかは分からない。 しかし少なくとも、誰も友人がいない状態で、さびしく転校していくわけではない。 骨折したよし子が笑顔で転校していくのと同時に、かおりたちの十二歳のときは終わる。  さて、私のこんなレビューくらいではこの作品の魅力の千分の一くらいしか伝えられていないので、図書館や書店で見かけたら手に取ってみてください。特にそこの小学五年~中一くらいの女子のあなたは必読!(もちろん「元女子」も結構です)
さよなら十二歳のとき (ポプラポケット文庫)
ポプラ社
薫 くみこ

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posted by つむ at 14:51

薫くみこ「きらめきの十二歳」

 「十二歳シリーズ」は薫くみこ先生によると前作でおしまいにするはずだったそうだが、おそらく好評だったため続編が書かれることになった。 それがこの「きらめきの十二歳」。  夏休みに入り、三人の中学一年生女子にはそれぞれショックな出来事が。かおりは、インド在住の初恋の小野さんからの手紙を受け取るが、どうやらステディな女性がいるらしいことを知る。 菜々は、気になっている柔道部の和也に幻滅するちょっとした事件が。 そして梢は、付き合いはじめた先輩の純一が別の女の子といい感じになっているのを目撃してしまうのだ。  そんなさえない夏休みをどうにかしなければということで、三人はかおり宅の数ある別荘の中から、軽井沢に行かせてもらうことにする。 ところが付き添いを頼んだ長姉の洋子の様子がどうもおかしい。 いつもなら元気いっぱい、口うるさくうっとうしいはずの洋子がなんだか沈んでいるのだ。 一方軽井沢でかおりは、自分を付け狙うような人物の影が気になってくる。 その正体は、なんと洋子の元婚約者・高岡という青年だった―――  中学一年生女子といえば、一番恋愛に興味を持ちだす年ごろ。 そんな彼女たちのプチ失恋からこの軽井沢旅行は始まるわけだが、この地で彼女たちは大人の恋愛の扉を少しのぞき見ることになる。  もうひとつ、この物語に味を与えているのが、洋子の大学時代の恩師・雲野先生。  軽井沢に引っ込んで、好きだった彫刻に打ち込んでいる老紳士なのだが、ひょうひょうとした人柄であるうえに、亡くした夫人を今も思い続ける愛妻家でもあるのだ。  好きだった人に別の女性がいたり、思っていた人と違ったことに愕然としたり、そんな憂鬱をかかえていた三人は、別れてもなおお互いのことが忘れられない洋子と高岡、そして亡くなった妻を心に宿しながら充実した余生を送っている雲野先生に、自分たちの悩みがちっぽけなものであることを思い知らされる。 そして、自分たちの問題は誰が解決してくれるのでもない、自分たちがそれぞれぶつかっていくしかないと胸に刻むのである。  軽井沢のおしゃれで涼やかな風景描写も楽しめる佳作である。  
きらめきの十二歳 (ポプラポケット文庫)
ポプラ社
薫 くみこ

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忘れたくない気持ち  ...
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posted by つむ at 14:41

薫くみこ「十二歳はいちどだけ」

「十二歳シリーズ」の第三作である。  名門私立女子中学に通うかおりはテニス部で、公立中学に通う菜々は剣道部でそれぞれ汗を流す日々。 しかし菜々と同じ中学の梢は、心臓弁膜症のため大好きなスポーツを奪われ、運動部に入部することはできない。 仕方なくバスケットボール部のマネージャーになるものの、自分がバスケをできるわけではなく、選手たちの世話役でしかない毎日に嫌気がさし、自分の病状がこれからどうなっていくのかという不安も重なり、自暴自棄になっていく。 そして気づけば中学の不良グループの一員になり、夜遊びをするように。  梢の母から相談を受けたかおりと菜々は、梢を立ち直らせるべく、シュートの技術を磨き、シュートだけでも試合に参加できないかと考える。 かおり、菜々、梢はシュートの朝練を始め、元不良だったという中学の先輩・純一の支えもあり、梢のシュート技術は磨かれていく。 やがて、バスケットボールの区大会が始まる―――  スポーツしかできなかった、そしてそのスポーツが区内でも指折りの実力だった梢にとって、病気でそのスポーツを断念せざるを得ないというのは、中学一年生としては過酷すぎる状況だ。  なにごともなく平穏に暮らす菜々、そして家柄や頭脳などに恵まれたかおりをねたみながら、一時は不良グループでかつあげをするほどに落ちて行ってしまう梢。  そんな梢を必死に支え、時には叱り飛ばし、梢の通う病院にまで押しかけ、なんとか自信を取り戻させる方法はないかと頭を悩ませるかおりと菜々。  正直、いくら親友でも、ここまでディープにできるだろうかと首をかしげてしまうほど、二人の行動はいちずである。  だからこそ、「こんな親友がほしい。こんな友情をだれかと築いてみたかった」とうらやましくも感じる。  友情と並び、本作のもう一つの重要な要素、それは三人それぞれのほのかな恋愛模様である。  かおりは、初恋の人である家庭教師の小野さんが、インドに教師として赴任することになり、最後の別れを惜しむ(そして実はこれが本当の最後になってしまうのだが)。  菜々は、柔道部の和也のことも気になりつつ、小学校六年で転校していった作郎からの手紙に心を躍らせる。  そして梢は、高校浪人中の純一のガールフレンド(のひとりに過ぎなかったわけだが)になれたことで、バスケの練習にも熱が入るのである。  中学生のことなので、恋愛といっても淡くてすがすがしく、もちろん友情にひびが入るわけでもない。  かおりのようなドラマティックな初恋とまではいわないから、せめて普通にまともな初恋が私もしたかったなあ(sigh)
十二歳はいちどだけ (ポプラポケット文庫)
ポプラ社
薫 くみこ

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一番初めの愛読書でし ...
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posted by つむ at 16:03

薫くみこ「あした天気に十二歳」

(前の記事からお読みいただけると幸いです)  児童文学史上に燦然と輝く薫くみこ先生「十二歳シリーズ」の、本作は第2弾。  かおりは名門私立女子中学に、梢と菜々は公立中学に進学するが、三人の友情は変わらず、近所なのもあって、たびたび会って遊んでいる。  そんなある日、梢と菜々は、かおりの父が女の人と歩いているのを目撃してしまう。  同じ頃かおりも、母親の違う兄や姉たちが、父の女性問題について話し合っているのを立ち聞きしてしまう。 唯一母が同じ兄の透も父の問題は知っている様子。 さらには入院中の母の様子もどこかおかしい。 かおりはひとり悩み始める。  そんなかおりに親身になってくれるのが、担任で美しく聡明な島村夕子先生。  ところがその島村先生が、学校関係の妻子ある男性と交際しているといううわさを聞き、かおりは絶望して行方をくらましてしまう―――  中学生になり、こどもの頃は自分のことだけ考えていればよかったのが、だんだん家族や友人、さらには社会へと視野が広がっていき、その過程で悩むことも増えてくる。 かおりは父の不倫疑惑というシリアスな問題に突き当たることになる。  悩むかおりに島村先生が語る印象的な言葉がある。 「あのね、1たす1が3でもまるになっちゃうの」  大人になると、子供時代のように何でもきっちりしていればマルがもらえるということもなく、それどころか明らかに外れたことをしていても許されてしまう者もいれば、心ならずも外れて行ってしまう者もいる、そういう大人の世界の不条理を伝えようとしていたのかもしれない。  島村先生も、うわさが本当ならば、不倫という「バツ」な行為をしているわけだが、それでもひたむきに、自分がしたいと思ってしていることならば、リスクはすべて引き受ける覚悟で、とことんやってみるべきだ。 周りを気にして立ち止まってしまうのはもったいないことだ。 そういうメッセージが込められているのだろう。  中学生になったばかりのかおりに(そして小学生だった読者の私に)は、理解しがたいメッセージだったかもしれないけれど。  周りばかり気にして、リスクが少ない方へ少ない方へと生きてきてしまった私は、少しだけ島村先生に憧れなくもない。
あした天気に十二歳 (ポプラポケット文庫)
ポプラ社
薫 くみこ

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posted by つむ at 14:00

薫くみこ「十二歳の合い言葉」

 夏休みの宿題の読書感想文が間に合わない……!!とお悩みの小学生のみなさんへ(まあ、大人のみなさんでもいいんだけど)、私の心に今でも残っている児童文学「十二歳シリーズ」を紹介してみたいと思います。  汐沢かおり。 優等生で美人、明るい性格で家は大金持ち、と、一見すべてに恵まれた少女。 しかし、母は後妻で、しかも難病で入院中。 たくさんいる兄や姉の大半は先妻の子なので歳も離れていてどこか冷たく、家庭は決して居心地のいい場所ではない。  本居梢。 勉強は苦手だが、スポーツならだれにも負けない、男勝りの女の子。 ところが心臓弁膜症をわずらい、唯一のとりえであるスポーツを奪われてしまう。  そして勉強も運動も家庭環境もすべてにおいて平均的な、川辺菜々。  こんな、一見仲良しになりそうもない三人の小学六年生女子は、無二の親友で、かつ男の子にも負けないいたずら好きの女の子たちである。  一作目「十二歳の合い言葉」は、かおりが家の方針で名門私立中学の受験をすることになり、家庭教師の小野さんにほのかな思いを寄せるようになる。 しかし受験組ではないほかの二人とは距離があいていってしまい、一方で病気をかかえる梢は、いつしかクラスの嫌われ者、飯島よし子に近づくようになる。 そしてある事件から梢と菜々はクラスで孤立してしまい、ついに宮崎県への家出を企てる―――    てな感じであらすじだけを書くとなんだかありがちな話みたいだけど(自分の文章力のなさ!)、薫くみこ先生の表情豊かで繊細な文体、そして中島潔先生の流麗な挿絵で、ぐっと胸を締め付けられるせつない物語になっているのである。  私は小学五年生くらいでこの小説に出会い、自分のおこづかいで単行本まで買ってしまったし、友人にも貸したりした。  こどもから少女へ成長する扉を開けかけていた私の、一歩だけ先を行っているような三人の女の子に、その友情のあり方に感動していたのだ。  
十二歳の合い言葉 (ポプラポケット文庫 (054-1))
ポプラ社
薫 くみこ

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何年たっても愛読書当 ...
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posted by つむ at 15:50

大森南朋さんの単行本「さもあらばあれ」買った!

 南朋さん………  もう、「ハゲタカ」以来こんな感じなんである(ってことはけっこう長いな)。  ファンドマネージャーから気の弱いベーシストまで何でもこなす俳優・大森南朋さんの単行本が発売ということで、書店へ飛んで行きましたよ。  なにこれっ、冒頭のグラビアからして萌えまくりじゃん!  でも個人的には、たばこを吸ったりする渋めの南朋さんの写真も好きだけれど、ふと見せる笑顔があまりにもまぶしくて、こっちの方にキュン死  各界有名人からの愛あるコメント、親友だという斉藤和義氏との対談、全出演作品一覧など、まあ読みごたえあるわ。  でもさらっと読もうと思えば読めるので、大ファンの人も、ちょっと気になるという程度の人も、気軽に読んでみてほしいなあ。  南朋さんの魅力ってなんだろう。  いわゆるイケメン枠ではないと思う。  ものすごい華があるわけでもない。  役者としての実力だけが魅力というわけでもない。  思うに、「身近にいそうな感」がキモなのではないかと。  いつも隣で仕事している上司とか、友人の旦那さんとか、そういう距離感。  全然意識してなかったのに、近くにいるうちに、ちょっとした優しさとか、ちょっと間抜けなところとか、実は色気があるところとかがだんだん見えてきて、気になる存在になってしまって、気がついたら不倫しちゃってた、みたいな、そういう感じ。  そういう妄想をかきたてるような感じ。  その辺の、どこにでもいそうな人の色気なんだな。  キ××クとか福×とかそういうわかりやすいスターの色気とか華もいいかもしれないけど、私はやっぱり南朋さんだな  今度は、ごくごく普通のお父さんの役が見てみたい。  いや、やっぱりひとくせある役が見たいかな。  要するに何でも見たいし、何でもこなせそうな南朋さん。  好きだわー  今回は好きすぎてアホなブログになってしまいすみません。
大森南朋 さもあらばあれ
宝島社
大森 南朋

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大森さんで頭がいっぱ ...
大森南朋が満載あれも ...
重篤・南朋中毒「俳優 ...
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posted by つむ at 22:40