中山可穂「男役」

 ぼーっとしていてもこんな小説を見つけてしまうなんて、私のヅカアンテナもここに極まれり、といったところかしら
 ストーリーを簡単に(ネタばれ注意!)
 ※はじめにお断りしておきますが、この小説は宝塚歌劇団という実在の劇団を舞台にしていますが、まったくのフィクションで、実際の人物・事件等とは何の関係もありません。

 宝塚歌劇団研究科3年(研3)にして新人公演主演に抜擢された男役、ナッツこと永遠ひかる。
 しかも本役(つまりトップスター)は憧れのパッパさんこと如月すみれ。 さらにそのパッパさんのサヨナラ公演ということもあり、ひかるは光栄ながらも緊張と苦悩の日々を送っていた。
 演目「セビリアの赤い月」は、50年ほど前に「黒薔薇のプリンス」とまで称された人気男役トップスター・ファンファンこと扇乙矢、および娘役トップ・チャメこと神無月れいのお披露目公演であった。 しかし不幸なことに開演わずか2日目にして、ファンファンが舞台上の事故で死亡。 チャメはショックのあまり休演し、そのままひっそりと退団してしまった。 さらには演出家の卯山拳までもが早世してしまう。 以来、再演のたびにケガや事故が起こる「呪われた演目」として恐れられる一方、ファンファンは生徒たちのピンチを救ったりアドバイスを与えたりする「宝塚の守り神」として「ファントムさん」と称され崇められることとなる。 ファントムさんに目をかけてもらった生徒は必ずスターになると。 
 パッパさんには新人の頃からファントムさんの姿が見え、会話もできるのだが、ある時ひかるにもファントムさんの声が聞こえるようになる。 しかしそれには理由があった。 ひかるの大好きな父方の祖母、なぜかひかるの宝塚受験をかたくなに反対し、入団してからもただの一度も見に来てくれたことのない祖母こそ、チャメその人なのである。 チャメのことを50年もの間ずっと劇団で待ち続けていたというファントムさんになんとか祖母を会わせたいと、ひかるは家族を巻き込んで祖母の説得に当たる。 チャメは認知症を患っていたのだが、奇跡的に自力で宝塚大劇場にたどりつき、孫娘が熱演する新人公演の客席で、かつての相手役・ファントムさんとの再会を果たすが……。

 作者の中山可穂さんは少女時代からのヅカファンで、宝塚歌劇団の演出家を志望していた時期もあるそうで、スターをめざして邁進する若手ジェンヌたちのひたむきさ、下級生に主役を奪われても腐らず下級生を励ます上級生たちなどの描写は的確である。
 しかし、視点がひかる、すみれ、ひかるの叔父など動いてしまって定まらない(ひかるが主人公だと思ってたら、なぜかすみれの視点で終了とか)、「役不足」という言葉を間違って使っているなど、ちょっと小説として残念な点もあった。
 また、すみれがトップになるのと引き換えにファントムさんに譲り渡したものは何なのか、とか、ひかると上級生・花瀬レオとの仲間愛を超えたちょっと危ない関係(? なのかな?)の顛末とか、あえて書かれていないものも多くあり、これはもしや続編を出す気満々なのでは、と期待も残る。(すみれはもしかしたら、トップになるために恋人と子供を捨てたのだろうか……?)
 全体にヅカファンなら楽しく読める小説となっているが、宝塚独自の用語がほとんど解説もなしにそのまま載っているので、ファン以外には「?」の部分もあるかもしれない。 お近くのヅカファンをつかまえて一緒に読むようにして下さいw
 私の勝手な妄想だと、ひかるは宙組の和希そらみたいな、現代的でやや線の細い感じの子を想像する。 すみれはかつての真矢みきみたいな感じかな。 ほかに花瀬レオは、二番手男役の笹にしきは、新人公演ヒロインの夢ぴりかは(それにしてもこのあたりの芸名はもっと何とかならなかったのか。米じゃないんだから)……などと妄想キャストを考えてみるのも楽しい。


男役
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中山 可穂

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