薫くみこ「さよなら十二歳のとき」

 「十二歳シリーズ」の最終話となる五作目。
 二学期が始まるが、梢と菜々は大きな悩みをかかえている。 自分たちに関する悪いうわさが広まっているのである。 小学六年生の時にクラスメートの飯島よし子とともに起こした「カンニング事件」が蒸し返されて、梢と菜々(特に実際不良仲間に入っていたこともある梢は分が悪い)を避ける者が増えていたのである。
 二人は学校が違うかおりに相談しようとするが、かおりはといえば所属するテニス部で、大会のレギュラーメンバーに一年生ながら選出され、練習に打ち込んでいて、二人の悩みを聞く余裕がない。 梢と菜々は再び、かおりに距離を感じることになる。
 ところがかおりの身に大事件が起きる。
 インドで教師として働いていた初恋の小野さんが、水死したという知らせが届くのだ。
 ショックで食事ものどを通らなくなるかおりを梢と菜々が見舞うが、ちょっとした感情の行き違いから喧嘩別れしてしまうことに。
 そんなかおりをやさしく励ますのは、意外にも日頃がみがみと口うるさい長姉の洋子だった。
 一方、飯島よし子が梢を訪れ、カンニング事件のことを中学に広めたのは自分であること、中学に入学しても相変わらず自分には友人ができないこと、もう一度友達になってほしいことを梢に訴える。 しかし梢は親身に話を聞きつつも、「プライドっつうの? そういうの持てって言いたいよ」と突き放すのである。
 やがて校舎から一人の女子生徒が転落―――

 本作を初めて読んだときは「なんでまた飯島よし子を持ち出すの? しかも小野さんが死んじゃうなんて…」と、子供ながらにかなり納得いかなかった。
 小野さんが死んでしまうことはかおりにとってはあまりにも過酷な試練である。 名門中学に入学したのも、その中学でも五本の指に入る成績を取っているのも、テニス部でレギュラーになっているのも、すべて小野さんに認めてほしいから…そんなかおりは、いつしか自分と小野さんのことしか見えなくなっていた(往々にしてかおりには一途すぎるところがある)。
 小野さんを失い、大事な親友である梢と菜々と決裂し、傷心のかおりは、母を亡くした洋子の話を聞き、気持ちを落ち着かせるのである。 美人だがどこか冷たく、気が合わなかった洋子と、初めて心が通った瞬間だった。
 また、薫先生としては、どうしても飯島よし子を幸せにしなければ終われないという気持ちがあったのかもしれない。
 小学六年生でカンニングという過ちを犯したが、更正して新しい友人たちと楽しく中学生活をすごしている梢と菜々に対し、中学でもいじめられ、家もどうやら貧しい様子、もちろん勉強もスポーツもできない、そんなよし子をかおりたち三人が受け入れ、心からその苦しみをわかるようになって初めてこの物語が終わる。 そう考えておられたのかもしれないと思う。
 校舎の屋上から身を投げ、病院に運ばれたよし子をかおりたち三人が見舞う。 「死のうとか思ったわけじゃなくて、ただみんなのとこ行きたいなって…」というよし子に三人は涙する。 よし子に共感できなかった三人(特にかおりにとってはまったく接点がない存在だ)が、やっとそれぞれに痛みを経験し、よし子の痛みを知ることができたのだ。
 よし子が転校して幸せになれるかどうかは分からない。 しかし少なくとも、誰も友人がいない状態で、さびしく転校していくわけではない。 骨折したよし子が笑顔で転校していくのと同時に、かおりたちの十二歳のときは終わる。

 さて、私のこんなレビューくらいではこの作品の魅力の千分の一くらいしか伝えられていないので、図書館や書店で見かけたら手に取ってみてください。特にそこの小学五年~中一くらいの女子のあなたは必読!(もちろん「元女子」も結構です)


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