キリンジ「For Beautiful Human Life」

 私の中でまたキリンジがブーム。
 もちろん初期の作品も素敵だと思うし、近作も良質なアーバンポップ(あえてこう書きます。心からのリスペクトをこめて)なんだけれども、その二つの懸け橋となっていると思われる、この作品「For Beautiful Human Life」が、やっぱりどうにもこうにもいまだに好きでたまらないのです。
 あまりにもすがすがしいイントロから、新しい生活への期待がふくらむ「僕の心のありったけ」、暗闇から何かが生まれてきそうな、そして変拍子が何ともいえずかっこいい「the echo」、そして問答無用の名バラード「スウィートソウル」と、名曲ぞろいなんだけど、私の中でのこのアルバム収録曲の2大巨頭は「愛のCoda」そして「繁華街」。
 「愛のCoda」は、恋人と別れる覚悟で異国に旅立つ男の歌。 空港で流してほしい、本当に景色が見えてきそうな、哀切なナンバー。
 「繁華街」はこの重ーい感じが何とも言えない。 どんよりと雨が降る異国の夜の街。 いかがわしい雰囲気。 私の中ではムーンライダーズ「シナ海」と並ぶ名アジアンソングである。

 とまあ、いろいろ書きつつ、やはり最大の魅力は泰行氏のヴォーカルであるという、これまたいつもながらの事実にたどりつくんだな。
 初期の頃の、メロディーを一生懸命たどっているような(それもまたチャーミングだったんだけど)ヴォーカルも、最近の男性の色気が漂うようになりつつあるヴォーカルももちろん大好きだ。
 けれどもこの時期はそのちょうど中間。 青年から大人の男性へ……青さもありつつ深みが増してきた、という、私的には一番の好みのヴォーカルを聴かせてくれる。
 もうとにかく聴いて下さいとしか言えない。 好きだわー。
 特に「スウィートソウル」のこの歌声はどうよ……

 個人的なことを書くと、このアルバムがリリースされた頃は、私の今までの人生の中で、最も人間的に落ちていた時期だった。
 向かない仕事を辛抱してやっていたものの、ストレスが体全体に噴き出てしまい、何かしら病院にばかり通っていた。
 このアルバムだって病床で聴いていたものだ。 
 結婚2年目で、夫婦仲もまだまだしっくりいってるとは言い難い状況だった(新婚さんがアツアツとは限らない。新婚だからこそぎくしゃくもするものなのだ)。
 人間として半分死にかけていた。
 だからこのアルバムも、収録曲は素晴らしいとは思っていたものの、本当に心から楽しんでは聴けていなかった。
 そして今。
 私なりに尊厳を取り戻して、人生における大きな目標も達成して、しあわせといえる状況を迎えて、やっと、心から「このアルバムいいなあ。キリンジいいなあ」と思えるようになったのだ。

 まあ、私のことはどうでもいいとして、名盤である。 
 キリンジをさわやかなポップデュオだと思っている方にこそ聴いてほしい、黒光りするキリンジである。 


For Beautiful Human Life
EMIミュージック・ジャパン
2003-09-26
キリンジ

ユーザレビュー:
世界に誇れる大傑作こ ...
研ぎ澄まされたアレン ...
相変わらずいいなあ。 ...
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