「宝塚イズム 4」

 今回の特集は「サヨナラ 彩乃かなみ」。
 彩乃かなみ。
 月組娘役トップスター。
 だけど私は残念ながら、トップのかなみちゃんを見ていない、というか彼女を見たのは一回しかない。
 宙組時代の「白昼の稲妻」。
 宝塚に詳しい人ならわかると思うけれど、当時の宙組といえば、トップコンビ以外は「生きた背景」であって、かなみちゃんも二番手娘役でありながらセリフは三言くらいしかなかったような気がする。
 あれではかなみちゃんを見たうちには入らない。
 その後幸運なことにテレビで彼女を見る機会があった。
 FNS歌謡祭で「千の風になって」を美しく歌いあげたり、「スマップスマップ」で陽月華らと「すみれの花咲く頃」を歌ったりする姿を見た人も多いだろう。
 素晴らしくふくよかで澄んだ歌声の持ち主、もちろんルックスはキュートで実力もある、後世に語り継がれる名娘役だったと思う。
 本書ではそんな彼女と、相手役の瀬奈じゅんとの関係性がいかに素晴らしかったか、彼女が単にかわいいだけでなく女性の強さももろさも表現できる新しいタイプの娘役であったこと、などについて複数の方が語っている。
 いつも通り公演評や、OGインタビュー、コラムもあり。
 
 うーん、だけど…。
 実社会では女性が男性より上に立つことはかなり難しい、だけど宝塚では女性がトップに君臨することができるのよ、みたいな論調の人が目に付くのがどうもな…。
 もちろん男性中心社会の中で苦労してきたある世代の女性たちが、宝塚を観て「女性でもこれだけできるんだわ!」とパワーをもらうというのはあるのかもしれないけれど、宝塚歌劇って、そういうんでもないような気がするのだ。うまくいえないけれど。
 そもそも「結婚したら辞めなければならない」という時点で、「仕事と結婚、出産、子育ての両立」という命題をかかえている現代の女性たちにとってはもはや目標にはなりえないと思うし。
 結局宝塚歌劇団の幹部は男性ばかりなわけだし、上層部にとってみればトップスターといえどもただの踊り子の一人にすぎないのでは?というのは醒めすぎ?
 「女性でもこんなに輝ける!」的な論調を続けている限り、今の女性たちの共感は得にくいのではないかと思う。

 その点、高野麻衣さんというライターの方の文章は素直で好感がもてた。
 クラシック関係のライターさんだそうだが、ごく最近ファッション雑誌などでタカラジェンヌを見かけて興味を持ち、実際に観劇してはまったのだという。
 「もっといろんな方法で宝塚の素晴らしさをアピールするべきだ」というようなことを書かれているが、私も同感である。
 本書にはOGの「公演評」ばかりが載せられているが、OGが活躍しているのは舞台だけではない。
 大阪ガスのCMで「キッチン買い換えたい!」と叫んでいる叶千佳、「篤姫」に出演中の水月舞、「薔薇のない花屋」に出演した松田沙紀(咲花杏)、もちろん「金麦」の檀れいを忘れちゃいけない、そして映画や写真集でセンセーショナルな話題になってしまった月船さらら。
 もちろん現役生でも音月桂、龍真咲などCM出演者は多い。
 ファッション雑誌を開けば水夏希、瀬奈じゅんなどが「自然体で頑張っているかっこいい女性」として登場している。
 凛としていて女性らしさも忘れず、品があって生き生きしているタカラジェンヌ(OG) がメディアにたくさん登場しているのだから、そして新たな宝塚ファンを獲得しつつあるのだから、本書の一部の執筆陣の方にもその辺キャッチアップしていってほしいと思う。


宝塚イズム 4 (4)
青弓社

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