早く寝返りが打ちたい! 盲腸入院日記②

6月12日(火)。結局寝たんだか寝なかったんだか分からない一夜を過ごし、疲れきっていた。
30秒に一度「ういーん」という音を立てて両足首が機械によって締め上げられる。一分に一度血圧が測られる。点滴も打たれている。尿管には管が刺さっていて、動くと痛む。荒っぽい看護師がその管を振っていったりすると激痛。そんなこんなで身動きがとれず、寝返りも打てず、長い長い夜を過ごしたのだった。
 ところで夫と母は、私の切られた虫垂を見せてもらったらしい。普通鉛筆くらいの太さとされている虫垂だが、私のはウインナーくらいの太さに腫れ上がっていて、色もサラミのような赤黒い色だったという。一目見て「これは切ってもらわないとあかんわ」というしろものである。それにしても家族が見て、持ち主である私が現在に至るまで見てないというのも悲しいものである。
 夫は火曜日も休みを取ってくれた。しばらくは母と交代でついていてくれる。いろいろな生活用品も買ったり持ってきたりしてくれる。本当にありがたいことである。こういう時、家族のありがたみがわかるというものだ。
 それにしても痛い。あれだけひどかったおなかの痛みはうそのように消えてしまった。本当にうそみたいである。やっぱり盲腸だったんだ。「盲腸」というのをほとんど信用していなかったため、何度も先生に「手術したら本当に治るんですか?」くらいのことを聞いてしまった。悪いことをした。それに代わって、当然のことながら傷の痛みがひどくなり始め、3回目の座薬となる。
 寝返りが打てない、寝たきりで何もできないというのが、こんなにつらいとは思わなかった。体を動かせないので本も読めなければラジオも聴けない。仕方がないから腕の毛を抜いてみたり。
 「ガスが出ないとご飯が食べられない」というのは聞いていたので、また「ガスが出る出ない」で一騒ぎあるのかなと暗澹たる気持ちになったが、なんとこの朝すぐにガスが出てくれた。やった。点滴ばかりで少々おなかもすいてきた。それよりなにより、いつになったらこのうっとうしい尿の管を抜いてくれるんだろう。これがあるばっかりに身動きが取れないのだ。もう麻酔は抜けた。足も動かせる。だから早く管を抜いてよ! お願いだから管を抜いて! という感じで、イライライライラしながら、看護師さんの足音がすれば「抜きに来てくれたのかな?」と期待し、そうでなければがっかりし、看護師さんが来るたびに「おしっこの管っていつごろ抜いていただけるんですか?」とそれとなく聞き、もうとにかく頭の中がおしっこの管おしっこの管おしっこの管と全面的におしっこの管状態になっていた。気も狂わんばかりに早く抜いてほしかった。早く自由になりたかった。
 やっとのことで管を抜いてもらえたのが10時30分ごろ。ほとんどの針がそうであるように、刺す時よりは抜くときの方が痛くない。両足首の機械も取り払ってもらった。血圧計もはずしてもらえた。点滴とはまだしばらくの付き合いである。なにしろまだ何も食べることができないのだから。
 それにしてもこんなにも「座りたい」「立ちたい」「歩きたい」と心の底から願ったことはなかったし、こんなにも「座れる」ことをありがたいと思ったことはなかった。当たり前だと思っていたことが当たり前ではないということ。今回の入院生活で知ったことのひとつである。
 ベッドになんとかかんとか腰をかけ(もちろん傷が痛む)夫と面と向かって会話できることを、こんなに幸せだと感じたことはない。
 さて、身動きが取れるようになれば、N先生も看護師さんも「どんどん歩いてください」と言う。え? どんどん歩けって? この手術したばかりの痛いおなかを抱えて、点滴を引きずってどんどん歩けって言うの? 先生によると、どんどん歩いた方が傷の治りが早くなるのだと言う。だらだら寝てばかりいると周辺組織との癒着もありうると。それは困る。看護師さんにはじめのうちはついてきてもらって、まずはトイレまで歩く。むちゃくちゃ傷が痛い。これが歩けば歩くほど治るっていうの? 
 かといって寝ていても痛い。傷を下にするのも、上にするのも、仰向けになるのも痛い。なぜ仰向けが痛いかというと、前の晩ずっと仰向けで寝ざるを得なかったため、坐骨の部分が猛烈に痛み出したのである。20歳の頃ここを傷めたことがある私としては、まさに爆弾に火をつけてしまったようなもの。というわけで寝ることも、ずっと座っていることもできず、泳ぎ続けていなければ死んでしまう魚のように、ずっと(ってほどでもないけど)歩き続けることになってしまった。点滴をカラカラ引きずって。

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