村上春樹「羊をめぐる冒険」

あらすじ(結末あり注意!)
 ★1978年。僕は29歳になっている。翻訳事務所の事務員の女の子と結婚していた僕だが、妻に恋人ができたために離婚する。
 広告制作の仕事の過程で、僕は信じがたいほど魅力的な耳を持つモデルの女の子と知り合う。耳のモデルと校正のアルバイトと高級娼婦の仕事を掛け持ちしている彼女が僕の新しいガールフレンドになる。
 ある日僕は、ある広告に載せた写真に写った、背中に星の斑紋がついた羊を見つけ出すこと、さもなければ社会から抹殺すると、とある右翼の大物の秘書から脅される。その写真は、北海道に渡ったという鼠から送られてきた写真だった。鼠はその写真をどこでもいいから人目につく所に出してほしいと手紙に書いてきて、僕は何も考えずに広告にその写真を載せたのだった。右翼の大物である「先生」は余命僅かであり、与えられた期限は一ヶ月。鼠を探すため、僕は美しい耳のガールフレンドとともに北海道へ向かう。
 北海道では「ドルフィン・ホテル」というみすぼらしいホテルに泊まり、支配人の父親である「羊博士」から、その羊にまつわる話を聞くことになる。彼は農林省のエリート職員だったのだが、その羊がある時自分に乗り移り、そして去ってしまった。それ以来彼は職を辞して羊飼いになり、「思念のみが渦巻く地獄」の中を生きてきた、と僕たちに語る。所有していた牧場と家はとある大金持ちに売ったという。僕とガールフレンドは牧場のある十二滝町に向かう。
 僕たちは苦労してその牧場にたどり着く。それは鼠の実家の別荘になっていたのだった。鼠がそこでつい最近まで暮らしていた気配がある。しかし僕が眠った隙にガールフレンドが姿を消してしまう。そして奇妙な羊男が幾度か僕を訪問する。
 やがて鼠が別荘に現れ、恐ろしい事実が明らかになる。羊は羊博士の体から抜けたあと「先生」の体に入って政界・財界・情報のすべてを意のままに操り、次いで鼠の体に入った。鼠は羊に支配されることを拒み、羊を飲み込んだまま、別荘の梁で首をつって自殺した。そして「先生」の秘書は鼠のこともこの牧場の場所もすべて知っていながら、僕を北海道へやったのだった。
 別荘を出た僕を秘書が待っていた。「先生」が亡くなったことを告げ、秘書は別荘へひとり向かう。列車に乗った僕は、窓の外遠く、別荘のあった場所から爆発音と煙が上がるのを見る。
 僕は久しぶりに故郷へ帰り、川のほとりで二時間泣き続けた。★

 村上春樹の小説の中でもかなり難解な部類に入るのではないかと思う。
 少なくとも私は最初読んだ時はほとんどわけがわからなかった。
 今でも「羊」が意味するものは何なのか、「羊的思念」とは何か、なぜ鼠は死なねばならなかったのか、なぜ美しい耳のガールフレンドは去ってしまったのか、などなどわからないことだらけである。
 ひとつだけわかったことは、どれだけ「僕」が「人は誰も弱い。その弱さに早く気付いた人間が少しでも強くなろうと努力しなければ」と説得したところで、鼠はその自分の「弱さ」が好きだからこそ、「それは一般論だ。俺には通じない」とばかりに自分の個人的な弱さの中に沈み込んでいったのだということ。
 私にも身に覚えがあるから、鼠の気持ちはわかるような気がする。
 ここでいったん「羊シリーズ」(とあえて名づけるが)は終了する。
 しかし村上春樹は「僕」をなんとか幸せにしたかったのかどうなのか、80年代を舞台に「ダンス・ダンス・ダンス」を書き、「僕」を新たな冒険に飛び込ませるのである。
羊をめぐる冒険 (上)

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